ラッファー曲線
ラッファー曲線(ラッファー・カーブ)とは、
「税率が低いうちは税収を増やすが、税率が高くなると税収はかえって減少してしまう」
というものです。
横軸に税率、縦軸に税収をとった図で表すと、次のようになります。
税率が低いうちは、税率を上げれば上げるほど、税収も上がっていきますが、ある程度、税率が高くなると、労働意欲の減少などが生じ、税率を上げていくと逆にどんどんと税収も減少してしまうことになります。
アメリカのレーガン大統領のもとで行われたレーガノミックスの減税政策の理論的な根拠とされたものとして知られています。当時のアメリカは、財政赤字(双子の赤字の1つ)であり、税収を上げる必要がありましたが、このラッファー曲線を元に、税率が高すぎるから、税収が少ないものだと考え、減税政策を行いました。
ただ実際は、税率が高すぎるという根拠はなく、税率を引き下げたことで財政赤字の拡大を招くことになりました。
モデル
上記のようなラッファー曲線ですが、簡単な数式モデルで、どうしてこのような結論になるかを説明します。
家計
家計は、労働力$L$を供給し、賃金$w$のもと、所得$Y$を得ているものとします。
$Y = wL \quad \cdots \quad (1)$
この所得については、税率$t$がかかり、消費$C$を行いますが、政府からは補助金$A$がもらえるとします。
このとき、予算制約式は、次のようになります。
$C = (1 \; – \; t)Y + A \quad \cdots \quad (2)$
他方、この家計は、消費が多いほど、効用が高まり、労働供給が大きいほど、効用が下がるとし、次のような効用関数$u$を仮定します。
$u(C \, , \, L) = C \; – \; \dfrac{L^2}{2}$
この式に、$(1)(2)$式を代入すると、
$\displaystyle u(C \, , \, L) = (1 \; – \; t)Y + A \; – \; \dfrac{1}{2} \left( \dfrac{Y}{w} \right)^2 \quad \cdots \quad (3)$
となります。
$(3)$式について、家計は効用最大化を行うとして、$Y$で微分し、ゼロとすると、
$\displaystyle \dfrac{\partial u(C \, , \, L)}{\partial Y} = 1 \; – \; t \; – \; \dfrac{Y}{w^2} = 0$
であり、
$Y = (1 \; – \; t) w^2 \quad \cdots \quad (4)$
という一階条件を得ることができます。
政府
政府は均衡財政をとっているとすると、税収$T$に等しいだけ補助金$A$を支出することになります。
$A = T \quad \cdots \quad (5)$
ところで、税収は$tY$であり、$(4)$式から、$Y$をキャンセルすると、
$A = t (1 \; – \; t) w^2$
となります。
すなわち、$(5)$から、
$T = A = t (1 \; – \; t) w^2$
であり、これが「ラッファー曲線」になります。この式をプロットすれば、上記のラッファー曲線の図を描くことができます。
念のため、税率$t$について、税収$T$がどうなるかを見てみると、
$\dfrac{\partial T}{\partial t} = (1 \; – \; 2t)w^2$
であり、
$t \leq \dfrac{1}{2}$のとき、$\dfrac{\partial T}{\partial t} \geq 0$
$t \geq \dfrac{1}{2}$のとき、$\dfrac{\partial T}{\partial t} \leq 0$
となり、税率が50%よりも低いときは、税収は増えますが、税率が50%よりも高いときは、税収は減ります。
(なお、この50%というのは、あくまでもこのモデルによるもので、一般的に50%で分岐するとは限らないので、注意してください)
参考
小塩隆士『公共経済学』