概要
市場の失敗が生じる場合の1つとして、公共財の存在があります。
そこで、財・サービスの見方を説明したうえで、公共財をはじめ、4種類の財・サービスを説明したいと思います。
財・サービスの見方
公共財について説明する前に、まずは財・サービスについて、次の2つの見方があります。
①排除性
ある財・サービスの消費にあたり、他の経済主体の消費を排除できるかどうかという見方です。
また、排除できたとしても、非常に費用がかかる場合もあります。
例えば、山の風景を見ることができるというサービスがあったとき、他の経済主体によるそのサービスの利用を排除することは難しいでしょう。また、排除しようと思うと、山を覆い隠すなどの処置が必要で、非常に費用がかかります。
このとき、排除できる場合は「排除性」があるとされ、排除できない場合は「非排除性」を有した財・サービスとなります。
②競合性
財・サービスについて、別の経済主体が消費したとき、その財・サービスの消費が減るかどうかという見方です。
例えば、食料品はある経済主体が消費すれば減りますが、テレビの番組などは多くの人が見ても減ることはありません。
このとき、消費が減る場合は「競合性」があるとされ、消費が減らない場合、「非競合性」を有した財・サービスと言えます。
財・サービスの種類
これらの見方から、一口に財・サービスといっても、次の4種類に分けることができます。
非排除性 | 排除性 | |
---|---|---|
非競合性 | 純粋公共財 | 準公共財(クラブ財) |
競合性 | 準公共財(コモンズ) | 私的財 |
非排除性・非競合性を有した財・サービスは「純粋公共財」、排除性・競合性を有した財・サービスは「私的財」と呼ばれ、それら以外は「準公共財」と言われます。
そして、これらを一覧にまとめると、次の通りです。
純粋公共財 | 別の経済主体の消費を排除できず(非排除性)、別の経済主体が消費をしてもその価値は減らない(非競合性)財・サービスです。 (例)国防、警察 など | |
---|---|---|
準公共財 | クラブ財 | 別の経済主体が消費をしようとしたら排除は可能だが(排除性)、別の経済主体が消費をしてもその価値は減らない(非競合性)財・サービスです。 (例)ゴルフ場、ケーブルテレビ など |
コモンズ |
別の経済主体の消費を排除できず(非排除性)、別の経済主体が消費をしたら価値は減ってしまう(競合性)財・サービスです。 (例)共有林、漁場 など | |
私的財 | 別の経済主体が消費をしようとしたら排除は可能であり(排除性)、別の経済主体が消費をしてもその価値は減らない(非競合性)財・サービスです。 |
通常の経済学が「私的財」を想定して、経済モデルの構築や経済分析を行っていますが、私的財を以外の財については、それらのモデルがそのまま適用はできません。
そこで、公共財について、違った分析が必要になります。
参考
土居丈朗『入門 公共経済学』
奥野正寛(編著)『ミクロ経済学』