費用便益分析
費用便益分析とは、政策や事業を評価するにあたり、それらの便益と費用を算出し、この効果を測定するものです。
一般には、政策や事業を実施した後に、その効果を測定するために使われるのではなく、政策や事業を実施する前に、それらを実施していいのか悪いのかといったことを検討するために使われることが多いようです。
計算方法としては、便益を$V$、費用を$C$、割引率を$r$とすると、次のように計算されます。
純現在価値法
政策や事業の便益から費用を差し引くことで、その効果(純便益)の有無を検討するというものです。
ただ将来の効果なので、割引率を用いた現在価値でその効果は測られることになります。
$\displaystyle \sum_{i=0}^t \dfrac{B_i \; – \; C_i}{(1 + r)^i}$
この値がプラスであれば、純便益はプラスなので、その政策や事業は支持されることになります。
単純で分かりやすいので、費用便益分析では最もスタンダードな計算方法となっています。
純現在価値法を割り算にしただけと思うかもしれませんが、費用を1として、何倍の便益・効果があるのかを測ることができます。
費用便益比率法
政策や事業の便益を費用で割ることで、効果を測ろうというものです。
$\displaystyle \dfrac{\displaystyle \sum_{i=0}^t B_i / (1 + r)^i}{\displaystyle \sum_{i=0}^t C_i / (1 + r)^i}$
この値が1を超えれば、便益のほうが費用よりも大きい為、その政策・事業は支持されます。
内部収益法
政策や事業の純便益が0となるような割引率を求める方法です。
数式でいえば、次のような式を満たす割引率$r$を求めることになります。
$\displaystyle \sum_{i=0}^t \dfrac{B_i \; – \; C_i}{(1 + r)^i} = 0$
そして、この$r$の大きさを見て、政策や事業の効果がどうなのかを判断します。$r$が大きいほど、収益率は高く、逆に$r$が小さいほど、収益率は低くなります。
これも純現在価値法と似ていますが、収益率を計算できるという点で、違いがあります。
費用便益分析の問題点
費用便益分析は、政策や事業を評価する際に、一般的に用いられています。
ただ、次のようないくつかの問題点もあります。
・費用や便益をどのように捉えるかが重要となります。費用や便益の評価・計算を誤ると、この分析は有効ではなくなります。
また、政府がやりたい政策・事業には純便益を高く見積もり、効果があるとするなど、恣意的に用いられることもあります。
・割引率の大きさで、評価が大きく変わってきます。
割引率が高いと早く便益が発生するものが有利となるなど、割引率で評価の順位が異なってきます。
・純便益を最大化することが重要になりますが、その結果、個人にどのように分配されるかは別の問題となっています。
政策・事業がある人には効果があっても、他の人にとっては効果がないなどといった場合、それをどのように判断したり、便益をどのように分配するかは明らかにされません。
・純便益という形で1つの指標で評価していますが、個人ごとに選好が異なることを考えると、それでいいのかという問題があります。
・貨幣価値や数字で換算できないものがあるときなど、比較が困難な場合にどうするのかという問題もあります。
・真の価格や便益を測ることができなかったりした場合に、どうするのかという問題があります。
参考
中井達『政策評価』