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官僚の予算最大化行動モデル(ニスカネン・モデル)について

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投稿公共経済学初級
官僚が予算獲得を目的とした場合に、非効率な状態が生じる状況をモデル化した官僚の予算最大化行動モデル(ニスカネン・モデル)について、説明します。
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はじめに

 政府が政策を行う際に、その実務担当者として、官僚は大きな力を有しており、国を動かしているのは官僚であるとさえ、言われたりもします。

 官僚は政府の政策を実行するわけですが、その行動原理としては、必ずしも国全体のことを考え行動するとは言えないことがあります。例えば、いかに予算を確保するかということを中心に行動しているような場合がありえます。

 このように、官僚が予算確保を最大化したときに、問題が生じるとするのが、「官僚の予算最大化行動モデル(ニスカネン・モデル)」です。

官僚の予算最大化行動モデル(ニスカネン・モデル)

 まずは、官僚の予算最大化行動モデルにおいては、次のような仮定が行われます。

  ・官僚は、予算を最大化するように行動する(予算最大化により効用水準の最大化を行う)

  ・政治家と官僚の間には、情報の非対称性があり、公共財の供給水準と費用について、官僚はその情報を独占的にもっている

 この上で、公共財の供給量について、官僚が予算の最大化を行った場合とそうでない場合を比較します。

社会的に望ましい公共財の供給量

 公共財の供給量$q$について、その予算規模に応じた便益評価$TB$は、次のようになるとします。

  $TB = aq \; – \; bq^2$

 公共財の供給を増やしていくと、便益が上がっていきますが、同時に公共財を多く増やすと予算規模以上の公共財が提供されることになるので、便益も指数的に下がるような形になっています。

 他方、この公共財を供給するにあたっての総費用$TC$は、次のようになるとします。

  $TC = c q + d q^2$

この2式のもとで、総費用よりも便益評価がより大きくなる状態が望ましいと考えられますので、

  $D = TB \; – \; TC = (aq \; – \; bq^2) \; – \; (c q + d q^2)$

を最大化することになります。この$D$について、$q$で微分し$0$とすると

  $\displaystyle \dfrac{d D}{d q} = (a \; – \; 2 bq) \; – \; (c + 2 d q) = 0$

から、

  $\displaystyle q^* = \dfrac{a \; – \; c}{2(b + d)} \quad (1)$

となり、これが社会的に望ましい公共財の供給量になります。

官僚の予算最大化による公共財の供給量

 評価便益$TB$は予算規模でもあり、官僚はその予算規模の範囲内で、総費用$C$を賄う必要があります。

  $TB \geq TC$

 ただ官僚は予算を最大化するので、不等号はとれて、

  $TB = TC$

が、官僚の行動原理となります。

 この式を整理すると、次のような公共財の供給量を得ることができます。

  $\displaystyle q^{**} = \dfrac{a \; – \; c}{b + d} \quad (2)$

公共財の供給量の比較

 社会的に望ましい公共財の供給量と官僚による予算最大化を行ったときの公共財の供給量を比較します。

 $(1)(2)$式から、

  $\dfrac{a \; – \; c}{2(b + d)} < \dfrac{a \; - \; c}{b + d}$

であり、

  $q^* < q^{**}$

となっていることが分かります。

 すなわち、官僚が予算の最大化を行うと、社会的に望ましい状態以上に、公共財の供給が行われることになります。

 このように、官僚の予算最大化行動は非効率な公共財供給を招き、またより大きな政府になることを示唆しています。

参考

  片桐正俊『財政学

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