はじめに
経済学を勉強すると、当たり前のように、どんどんと微分が出てきます。
ただ、数学が苦手な人にとっては、微分そのものが何であるかもわからないことが多いと思います。
微分の基本について、できるだけ分かりやすく説明したいと思いますが、結論から言うと、
「微分は傾きである」
となります。
経済学の教科書を読むと、微分したものについて、傾きのような図が出てくることが多いと思いますが、それはまさしく微分は傾きだからです。
そこで、通常とは逆に、まずは傾きについて説明して、次に微分の説明に進みたいと思います。
傾き
そもそも傾きとは何でしょうか。
下のような図を考えたとき、$s$が傾きになります。
そして、傾きの大きさは、次のような計算で求めることができます。
$s = \dfrac{b}{a} \quad \cdots \quad (1)$
【おまけ】
傾き$s$を前提としたとき、この図の直線は
$y=sx$
で表すことができますが、$x=a \, , \, y=b$とすると、$(1)$式になります。
微分
次に、ある曲線について、傾きを求めたいとします(式としては次のようなものを考えます)。
$y =f(x)$
例えば、下のような曲線を考えましょう。
直線ならば、$(1)$式のように、傾きを求めることができません。
しかし、下図のように、その一部を拡大すると、直線っぽくなる部分が出てくるはずです。
例えば、東京の山手線は、都内を円を描いて走っていますが、その極小化した電車自体は、曲がっているわけではなく、直線の形状をしています。
そして、この図から、直線部分について、傾きを求めると、次のような式になります。
$s = \dfrac{f(x +h) \; – \; f(x)}{h} \quad \cdots \quad (2)$
ただ、山手線の電車が大きい場合には、どうしても直線にはできないように、図の三角形が大きいと、直線っぽくはなりにくくなります。逆に言えば、図の$h$が小さくして、三角形が小さいほど、直線になり、傾きを求めやすくなります。
そこで、$(2)$式において、$h$ができるだけ$0$に近いものとすると、次のような式になります。
$\displaystyle s = \lim_{h \rightarrow 0}\dfrac{f(x +h) \; – \; f(x)}{h} \quad \cdots \quad (3)$
これがまさしく、微分の定義になります。
例
上記では、傾きから微分を説明しましたが、逆に、微分から傾きであることを見てみましょう。
例として、次のような式を考えます。
$y= f(x) = b x$
この式の傾きは、明らかに$b$となることが分かります。
ところで、(微分の公式を用いてもいいのですが)この式を$(3)$式を用いて微分すると、
$\displaystyle f'(x) = \lim_{h \rightarrow 0}\dfrac{b(x +h) \; – \; bx}{h} = b$
であり、微分したものが傾き$b$になっていることが分かります。