代替定理
マクロ経済学の産業連関分析において、代替定理というものがあります。
代替定理とは、
「本源的生産要素が一種類であり、かつ、結合生産が存在しなければ、各産業で代替可能な技術が存在しても、結果的にその中から常に同一の技術が選択される」
というものです。
なぜ、このような定理が必要とされるかというと、産業連関分析において、投入係数$a_{ij}$はそれぞれの産業の技術を表していることになりますが、この定理がなければ、色々な投入係数が考えられ、投入係数が固定的でなくなるからです。
逆に言えば、この定理があることで、投入係数の固定性が保証されることになります。
代替定理がなぜ成立するのか
2つの産業がある場合のレオンチェフモデルを考えましょう。
$i$産業の総生産を$X_i$、中間投入(中間需要)を$x_{ij}$、最終需要を$F_i$とすると、需給バランス式は、次のようになります。
$\begin{equation}
\begin{cases}
x_{11} + x_{12} + F_1 = X_1\\
\\
x_{21} + x_{22} + F_2 = X_2\\
\end{cases}
\end{equation}$
ここで、投入係数を$a_{ij} = x_{ij} /X_j$とすると、
$\begin{equation}
\begin{cases}
a_{11} X_1 + a_{12} X_2 + F_1 = X_1\\
\\
a_{21} X_1 + a_{22} X_2 + F_2 = X_2\\
\end{cases}
\end{equation}$
ここで、生産にあたっては労働力のみとして、$i$産業で投入される労働力を$L_i$とし、総生産を1単位生産するのに必要な労働力を$a_i$とすると、
$a_i = \dfrac{L_i}{X_i}$
となります。なお、投入労働力は上限があるので、$L_1 + L_2 \leq \bar{L}$となります。
これを上記の式に代入すると、
$\begin{equation}
\begin{cases}
(1 ^; – \; a_{11}) \dfrac{L_1}{a_1} \; – \; a_{12} \dfrac{L_2}{a_2} = F_1\\
\\
\; – \; a_{21}\dfrac{L_1}{a_1} + (1 ^; – \; a_{22}) \dfrac{L_2}{a_2} = F_2\\
\end{cases}
\end{equation}$
となります。
この式から、$L_i$により、$F_i$が変化することが分かります。
このことから、$a_{ij}$を所与として、$L_1 + L_2 \leq \bar{L}$のもと、$L_i$を調整すれば、等式が成立することになります。
言い換えると、幾つもの技術(投入係数$a_{ij}$)のパターンがあっても、生産要素である労働力の調整で式はバランスするので、固定的な1つの種類の技術で済むということを表しています。
参考
宮沢健一『産業連関分析入門』
武隈愼一『ミクロ経済学』