はじめに
ミクロ経済学を学ぶと、最初のほうで、需要関数がでてきます。
日常用語でも、需要という言葉が使われることもあり、比較的分かりやすい考えだと思います。
ただ、更にミクロ経済学を学び進めると、補償需要関数というものが登場します。
「需要関数らしいけど、「補償」という言葉がついている」
「需要関数とどう違うの?」
などという風に思ったりもするでしょう。
そこでできるだけ、分かりやすく、需要関数と補償需要関数の違いを説明したいと思います。
消費者が直面する2つの問題
2つの財$x \, , \, y$があるとします。
消費者の行動を考えたとき、予算と自分の効用が一致するように、この2つの財の消費量を決定する必要があります。
図にすると、次のような右下がりの予算と無差別曲線の効用が一致すれば、最適な2つの財の消費量の組み合わせが決まるはずです。
下の左図のように、予算と効用が離れているときには、予算と効用がマッチするような2財の消費量の組み合わせは存在しません。下の右図のように、予算と効用が一致するときには、最適な2財の消費量の組み合わせとなります。
予算と効用が離れているとき、それを一致させるには、予算もしくは効用の線を動かす必要があります。
ただ、両方動かすのは、ややこしいです(数学的には解けない)
そこで、予算か効用の一方の線を固定させる必要があり、消費者はどちらの線を動かすかで、行動が変わってきます。
1つは、予算の線を固定させ、予算に合うように、効用の曲線を動かす。もう1つは、効用の線を固定させ、効用に合わせるように、予算を動かすということです。
前者を「効用最大化問題」、後者を「費用最小化問題」と言い、消費者は、予算と効用を一致させるため、2つの行動パターンがあることになります。
価格を$p_x \, , \, p_y$、効用関数を$u(x \, , \, y)$として、数式で表すと、次のようになります。
効用最大化問題 | 費用最小化問題 |
---|---|
$\displaystyle \max_{x \, , \, y} u(x \, , \, y)$ $s.t. \quad p_x x + p_y y = E$ |
$\displaystyle \min_{x \, , \, y} p_x x + p_y y$ $s.t. \quad u(x \, , \, y) = \bar{u}$ |
効用最大化問題の$E$は一定の予算を示し、費用最小化問題の$\bar{u}$は一定の効用を示しています。
(なお、ここで注意は、効用最大化問題には$\bar{u}$はなく、費用最小化問題には$E$はありません)
このように、
効用最大化問題 … 一定の$E$のもと、効用を$u(x \, , \, y)$を最大化する
費用最小化問題 … 一定の$\bar{u}$のもと、予算を$p_x x + p_y y$を最小化する
という2つの行動が消費者にはあることになります。
需要関数と補償需要関数
まずは、結論から言えば、それぞれは、次のようになります。
需要関数 … 効用最大化問題から得られた需要
補償需要関数 … 費用最小化問題から得られた需要
言い換えれば、需要関数も補償需要関数も需要であることは変わりないのですが、消費者の行動パターンの違いで、2種類の需要が存在することになります。
これを、需要関数と補償需要関数の式で見てみましょう。
需要関数 | 補償需要関数 |
---|---|
$x =D(p_x \, , \, p_y \, , \, E)$ $y =D(p_x \, , \, p_y \, , \, E)$ |
$x =D(p_x \, , \, p_y \, , \, \bar{u})$ $y =D(p_x \, , \, p_y \, , \, \bar{u})$ |
似ていますが、上記の問題をそれぞれ解いた結果なので、需要関数には$E$がありますが、補償需要関数には$E$はありません。逆に、需要関数には$\bar{u}$がありませんが、補償需要関数には$\bar{u}$はあります。
どちらの需要関数も価格$p_x \, , \, p_y$の関数ですが、需要関数は$E$の関数であり、補償需要関数は$\bar{u}$の関数であるということです。