はじめに
計量経済学で回帰分析を行うにあたり、モデルを定式化する必要がありますが、被説明変数が、時間そのものに影響を受ける可能性があることがあります。
もちろん、経済学において、時間だけが進み、変化が起こるということはあまり想定はできず、何らかの変化が時間と共に現れるということがほとんどですが、その変化が分からないときには、時間そのものに影響を受けていると考えていい場合もあるでしょう。
例えば、国全体の技術とGDPの関係を考えたとき、技術は日々進歩しており、時間が経過するとともに、その技術は上昇していると考えられるでしょう。ただ本来は、日々技術がどれだけ上昇し、GDPにどれだけ影響を与えているかを考えるべきですが、その計測は難しいでしょう。
このとき、時間経過と技術の上昇が関係しており、時間が経つほど、技術が上昇するとすれば、時間そのもののデータを使えば、技術とGDPの関係を考えることができるはずです。
このように、時間そのものをOLSのモデルに組み込むことが考えられ、それをトレンド変数と言います。
トレンド変数
トレンド変数は、時間を$t$としたとき、次のようにモデルに導入します。
$y_t = \alpha + \beta x_t + \gamma t + e_t$
$x_t$は普通の説明変数ですが、$t$も説明変数として、組み込んだ形になっており、このモデルを通常のOLSで推定することになります。
そしてこれにより、時間トレンドに対する反応を求めることができます。
また逆に、時間トレンドの影響を取り除きたいときにも、このトレンド変数は利用できます。
例えば、何らかの時間トレンドが$y_t$について予想されるとき、その時間トレンドがない状態について知りたいときに、このトレンド変数を使って、時間トレンドの影響を取り除くことができます。
なお、トレンド変数は、上記のようなものだけではなく、いろいろなパターンが考えられます。
例えば、
$\ln y_t = \alpha + \beta \ln x_t + \gamma t + e_t$
のように対数化したものを使えることもできます。これは、(誤差項を除いて)対数化を戻すと、
$y_t = e^{\alpha + \gamma t} x_t^\beta$
なので、時間トレンドが指数的に変化する場合に使うことができます。
参考
黒住英司『計量経済学』