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コースの定理とその例

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投稿公共経済学入門
経済学におけるコースの定理について、その内容と実際の例について、説明しています。
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コースの定理

 企業などのある経済主体が、他の経済主体にマイナスの影響を与えることがあります。
 例えば、ある企業が生産過程で、公害を発生させ、周辺の他の企業や住民に公害被害を与えるといった場合です。

 このようなことを、経済学では「外部不経済」と言いますが、このような問題について、1つの解決方法として、「コースの定理」があります。

 コースの定理とは、

  「経済主体の当事者間で取引に費用がかからなければ、法的制度に関係なく、交渉により当事者間で効率的な資源配分が実現する」

というものです。

 上記の例でいえば、公害を出している企業が、周辺の他企業や住民に補償を行うことで、外部不経済の問題はなくなり、当事者間で効率的な資源配分がなされるということです。

 特に、外部不経済を解消するには、政府による規制などが必要とされることも多いのですが、政府の介入なく、民間の経済主体だけで、外部不経済の問題が解消されると主張している点に、ポイントがあります。

コースの定理の問題点

 コースの定理は、端的に言えば、外部不経済を発生させている経済主体と、外部不経済を受けている経済主体の間で、双方が納得を行く形で、交渉を行えば、外部不経済の問題はなくなるという考えです。

 ただ、コースの定理については、大きく分けると、2つの問題点が指摘されています。

 1つは、交渉にあたって、取引費用が発生しないことを前提にしている点です。
 交渉自体、非常に労力がかかることですし、当事者が二者だけならば、まだいいのですが、複数の当事者がいると、より一層、交渉は大変です。当然ながら、当事者が納得がいくまで交渉を行う必要があることから、時間もかかってしまいます。
 このように、当事者間で交渉を行うには、通常は、何らかの取引費用が発生することから、コースの定理の前提自体に、問題があるとされます。

 2つは、交渉が行われるには、何らかの法的制度などが必要という点です。
 法的制度があれば、交渉などが行われることになりますが、法的制度がなければ、そもそも外部不経済を発生させている経済主体は、交渉すること自体、意味がありません。
 上記の公害企業の例でいえば、公害に関して、何らかの法的制度などがなければ、損をするだけなので、交渉自体が行われないことになります。
 

 厳密にコースの定理が成立しているとはいえないでしょうが、交渉などにより、外部不経済の問題を解決している例を挙げてみます。

漁業補償

 海岸沿いに工場や港を建設する場合、漁場に悪影響を与え、魚の獲れ高が減少することが考えられます。当然、そこで漁を行っている漁師は、工場・港の立地による外部不経済を受けることになります。

 この場合に、工場や港の建設者は、漁業補償という形で、一定のお金を漁師に与え、工場や港の建設を認めてもらうということがあります。

日照権

 高層ビルなどを建てる際に、その周辺の住民は、日当たりが悪くなるなどの環境悪化を招くことになります。
 現在では、太陽光発電などを行っている住民もいるでしょうから、高層ビルの建設は、売電収入という経済的な損失を招く可能性もあります。

 日照権においては、通常は、建設差し止めなどが多いのかもしれませんが、補償という形で、ビルの建設者と周辺住民の間で、交渉が行われるということが考えられます。

その他

 政府が絡んでいるので、若干、違うかもしれませんが、原発に関する国・電力会社と地方自治体・住民、空港の騒音問題に関する国と住民なども、近い例のように思います。

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