はじめに
地方政府が、最適な公共サービスを提供するには、どのようにしたらいいでしょうか。
国で考えれば、国籍や言葉の問題など様々な障壁があり、国民は海外に自由に移住することは難しい面があります。
しかし、地方政府であれば、このような障壁は小さく、比較的自由に移住が可能と考えられます。
そして、住民が自由に地方政府間を移動できれば、地方政府間で競争が起こり、各地方政府で最適な公共サービスが提供されるというのが、ティブーの「足による投票」という考えです。
足による投票
足による投票においては、次のような仮定が置かれます。
・人々は自由に地方政府間を移動できる
・人々は、すべての地方政府における公共サービスや税負担などについて、完全な情報をもっている
・地方政府による公共サービスは、他の地方への波及効果はなく、そこの地方政府に居住している住民のみがその便益を享受できる
・人々は居住している地方と働いている地方は、一致する必要はない
・人々が選択できる地方政府は、十分な数存在する
このような仮定の下では、次の2つの結果が得られるとされます。
・住民の選好に基づいた地方に移動が起こり、その地方政府の公共サービスは最適に供給される
・選好や所得が異なる住民ごとにグルーピングされ、それぞれ同質的な住民がその地方政府を形成する
最後に
この足による投票の考えは、直観的に理解しやすく、非常に分かりやすいものとなっています。
ただ、仮定を見たらわかるように、非現実的なことも多いとも言えます。
例えば、人々はすべての地方政府の公共サービスについて情報をもっているわけではないし、移住も費用がかかったり、先祖代々の土地に住んでいるなど、容易なことではありません。
現実を考えれば、非現実的な仮定ですが、子育て支援や教育などの公共サービスを見て、住民が移動するということはあったりもすることから、足による投票のメカニズムは、部分的には成り立っているといったところだと思います。
参考
井堀利宏『基礎コース 公共経済学』