1人で判断するのか、人々が話し合って決定するのか、どちらが正しい決断を下すことができるのでしょうか。
これについて、合議によるほうが、正しい決断を導くことができるとするのが、コンドルセの陪審定理です。
コンドルセの陪審定理
3人の裁判官がおり、ある容疑者について、有罪・無罪を決めるとします。
それぞれの裁判官が正しい決定をする確率は同一・独立で$p$とし、誤る確率を$1-p$とします。
なお、専門的な裁判官なので、2分の1よりも大きい確率で、正しい決定をできるとし、
$p>\dfrac{1}{2} \quad \cdots \quad (1)$
とします。
このとき、合議により多数決で判決を決めるとします。
3人とも正しい判決を下す確率は、
$p^3$
であり、3人のうち2人が正しい判決をする確率は、
$p^2(1 \; – \; p) + p^2(1 \; – \; p) + p^2(1 \; – \; p) = 3p^2(1 \; – \; p)$
なので、合議での多数決で、正しい判決が導き出される確率は、
$p^3 + 3p^2(1 \; – \; p) \quad \cdots \quad (2)$
となります。
1人で判断したときに正しい判決を導き出す確率は$p$なので、$(2)$式と比較すると、$(1)$式から
$p^3 + 3p^2(1 \; – \; p) \; – \; p = p (2p \; – \; 1)(1 \; – \; p) \geq 0$
であり、多数決で判決を下したほうが、正しい判決を導き出す確率は高いことが分かります。
すなわち、1人で判決を下すより、合議による判決のほうが、正しい判決を導くことになります。
なお、裁判官の3人について、同一だとしましたが、別々の3人だとして、正しい判決を下す確率が
$p_1 \geq p_2 \geq p_3 > \dfrac{1}{2}$
となっていたとしましょう。このとき、合議による判決の確率は
$p_1 p_2 p_3 + (1 \; – \; p_1)p_2 p_3 + p_1 (1 \; – \; p_2) p_3 + p_1 p_2 (1 \; – \; p_3)$
となりますが、上記と同様に、合議によるほうが高い確率で正しい判決を下すことになります。
参考
川越敏司『基礎から学ぶマーケット・デザイン』