はじめに
集団が意思決定するとき、多数決は、1つの選択肢を選ぶ方法として、一般的に行われていると思います。
選挙は勿論、複数の人が集まったときに、何か1つに決定するときには、多数決は一般的な方法です。
しかし、多数決が必ずしも、個々人の意思を反映した形になるものではなく、むしろ矛盾が生じるとしたのが、コンドルセのパラドックスになります。
コンドルセのパラドックス
3人の個人がおり、3つの選択肢A、B、Cがあるものとします。
そして、それぞれの個人は、次のような選好順序を有しているものとします。
個人1:A>B>C
個人2:C>A>B
個人3:B>C>A
このとき、3つの選択肢のうち、2つずつ選び、勝ち抜き戦をやって、3人の個人が望む1つの選択肢を選ぶとしましょう(この方法を「コンドルセ法」と言います)。
(パターン1)
まずは、AとBを多数決で決めるとします。上記の選好順序から
A:個人1と個人2の2名
B:個人3の1名
なので、選択肢Aが選ばれます。
次に、選ばれたAとCを多数決で決めます。
A:個人1の1名
C:個人2と個人3の2名
Cのほうが多数決では勝つので、Cが選ばれます。
このことから、最初にAとBを選ぶ方法では、最終的には選択肢Cが選ばれます。
(パターン2)
まずは、AとCを多数決で決めるとします。上記の選好順序から
A:個人1の1名
C:個人2と個人3の2名
なので、選択肢Cが選ばれます。
次に、選ばれたCとBを多数決で決めます。
B:個人1と個人3の2名
C:個人2の1名
Bのほうが多数決では勝つので、Cが選ばれます。
このことから、最初にAとCを選ぶ方法では、最終的には選択肢Bが選ばれます。
以上のように、パターン1では選択肢Cが、パターン2では選択肢Bが選ばれ、最初の選択にあたり、その選択肢を変えるだけで、結論が変わってしまいます。
このように矛盾が生じ、これを「コンドルセのパラドックス」と言います。
コンドルセ勝者
上記のように、選択肢を総当たりしていきますが、どの順序を変えたとしても、必ず選ばれる選択肢があるならば、それを「コンドルセ勝者」と言います。
ただ、上記のコンドルセのパラドックスにあるように、必ずしも、多数決においてコンドルセ勝者が得られるわけではありません。
しかし、人々が選択肢に対して単蜂な選好をもつ場合には、中位投票者の選好に合致した選好がコンドルセ勝者になることが知られています。
そしてこれを「中位投票者定理」と言います。
参考
林正義・小川光・別所俊一郎『公共経済学』