概要
現在の高齢化社会において、「シルバー民主主義」という言葉が散見されます。高齢者が増えると、若者を犠牲にして、高齢者に有利な政策がとられるというものです。
同じような考えとして、政治学・政治経済学の研究で「プレストン効果」(Preston effect)と呼ばれるものがあります。
プレストン効果とは、高齢化が進むと、政治家は自分が当選しやすいように、高齢者が好むような政策をとるというものです。高齢者にとって利益がある医療や年金などの政策を重視し、高齢者には無関係な教育支出や子供への社会保障などの政策を軽視することになります。
現在より40年近く前の1984年に発表されたものですが、現在の日本の状況に当てはまっているように思います。
このような効果はあるのか
高齢者が将来世代のために行動をした場合には、このような効果はないでしょう。また、間接的ですが、若者への政策を充実させた結果、社会全体がよくなり、高齢者もその恩恵を受けられるというのでしたら、この効果は観測されないでしょう。
ここで、若干古いですが、2010年前の研究で、高齢化と教育支出との関係を見た研究があります(Fumio Ohtake & Shinpei Sano「The Effects of Demographic Change on Public Education in Japan」)。
この研究では、1975年から2005年の都道府県のデータを使い、調査を行っています。
詳細は、この研究を見てほしいところですが、ポイントは大きく分けて、2つあります。
・高齢化率の上昇は、1人当たりの教育支出を減少させる
・かつてはこのような現象はなかったが、1990年代から、このような状態になっている
このことから、プレストン効果やシルバー民主主義は日本に当てはまっていると言えるとともに、現在の問題ではなく、すでに30年近く前から、この現象が生じていたことになります。
高齢者や高齢化自体を問題視するのは良くない面もあると思いますが、将来の日本を考えたとき若者の活躍が重要と考えると、非常に大変な事態といえるでしょう。
なお、このような問題を抑制するため、子供をもつ親の発言がより反映されるような「ドメイン式投票」が提唱されています。
参考
松浦司『現代人口経済学』
Fumio Ohtake & Shinpei Sano「The Effects of Demographic Change on Public Education in Japan」