概要
予算制約下の効用最大化とは、ある消費者が一定の予算のもと、自己の効用を最大化するように、それぞれの財の消費量を決定することです。
ミクロ経済学においては、最初に出てくる基本的なテーマなのですが、初級者にはイメージがつきにくい部分があるかと思います。そこで、本稿では、数値例を示して、その解き方を説明したいと思います。
解き方
予算制約下の効用最大化について、3つの計算例・数値例で紹介したいと思います。
例題として、次のような問題があるとします。
効用関数を$ u=xy$とし、財$ x$の価格が$ 2$、財$ y$の価格が$ 3$、所得が$ 20$のとき、財$ x$と財$ y$の需要量を求めたいとします。
数式で表すと、次のような問題になります。
$ \max \quad u=xy \qquad \cdots \qquad (1)$
$ s.t \quad 2x+3y=20 \qquad \cdots \qquad (2)$
このときの計算方法としては、次の3つがあります。
計算例1
単純に数式を代入して、計算する方法です。
まず、$ (2)$式を変形すると、$ x=15-3/2 y$となるので、これを$ (1)$式に代入します。
$ u=15y – \dfrac{3}{2}y^2$
これを$ y$で微分すると、
$ \dfrac{\partial u}{\partial y}=15 – 3y = 0$
なので、$ y=5$となります。そしてこの値を$ (2)$式に入れて計算すると、$ x=7.5$が得られます。
計算例2
限界代替率を使った方法です。
効用最大化の条件として、限界代替率と2財の価格は等しいというものがあります。
$ \dfrac{\partial u / \partial x}{\partial u / \partial y} = \dfrac{p_x}{p_y}$
この式を使うと、まずは次のような式が得られます。
$ \dfrac{y}{x} = \dfrac{2}{3}$
この式を変形すると、$ y=2/3 x$となるので、$ (2)$式に代入し計算すると、$ x=7.5$となります。そしてこの値を$ (2)$式に代入すると、$ y=5$が求められます。
計算例3
ラグランジュの未定乗数法を使う方法です。
$ (1)(2)$式から、次のようなラグランジュ関数$ L$が定義できます。
$ L = xy + \lambda(30 – 2x – 3y)$
この式を、$ x$、$ y$、$ \lambda$で微分すると、次の3つの式が得られます。
$ \dfrac{\partial L}{\partial x} = y – 2 \lambda = 0$
$ \dfrac{\partial L}{\partial y} = x – 3 \lambda = 0$
$ \dfrac{\partial L}{\partial \lambda} = 30 – 2x – 3y = 0$
そして、まずは$ \lambda$を消去すると、$ x – 3 /2 y = 0$が得られます。
後は、計算例2と同じように、$ (2)$式を使うと、$ x=7.5$と$ y=5$となります。
まとめ
初級者にとっては、計算例1のように、予算制約式を効用関数に代入して、数式を解いていくというのが分かりやすいと思います。ただこの方法は、$ u=xy$というように、効用関数が特定されていないと使えません。
ですので、より経済学を学んでいくには、計算例2・計算例3の方法は覚えておく必要があります。
特に、計算例3のラグランジュの未定乗数法は、ミクロ経済学だけではなく、マクロ経済学など様々なところで出てきます。一見すると、難しいようですが、ちょっとしたラグランジュ関数という式を作るだけなので、是非とも覚えておいたほうがいいでしょう。