はじめに
経済においては、企業や消費者が利益を追求して行動し、その結果、経済全体として、最適な状態になるとされます。
1つの財について考えると(部分均衡)、よく知られた下図のようなものが描かれ、企業・消費者にとって望ましい財の量や価格が決定されます。
ところで、このような状態から、政府が課税や補助を行った場合に、どうなるでしょうか。
これを分析するために、消費者余剰・生産者余剰・総余剰といった概念があります。これらについて、説明したいと思います。
なお、ここに一つの大きなポイントがあります。初心者からすると、なぜこのような概念が出てくるのか疑問に思われるかもしれません。
経済の変化や政府の行動により、企業や消費者が得をするのか、損をするのかを測るため、このような概念が必要となっています。
消費者余剰・生産者余剰・総余剰
文章による説明
まずは、これらの概念について、説明しましょう。
消費者余剰とは、消費者が全く消費をしなかったときと比べて、消費をすることでどれだけ効用が増えたかというものです。
言い方を変えれば、消費者余剰は、消費者にとっての消費による幸せの量であり、これが大きいほど、消費者は幸せだと言えます。
生産者余剰は、企業が全く生産をしなかったときと比べて、生産をすることでどれだけ利潤が増えたかというものです。
言い方を変えれば、生産者余剰は、企業が生産を行うことで得られる利潤であり、これが大きいほど、企業は儲かっていると言えます。
総余剰は、消費者余剰と生産者余剰を足し合わせたもので、経済全体の余剰を表します。経済全体としては、消費者がより幸せで、企業がより儲かるときが最も望ましいと考えられます。
グラフによる説明
これらの概念をグラフで表すと、下図のようになります。
消費者余剰は、需要曲線の下の部分から、購入額(価格×量)を除いた上の部分の三角形になります。お金を払っても残る効用とされます。
消費者余剰 = 台形OXED - 四角形OXEP = 三角形EDP
生産者余剰は、売上(価格×量)から、供給曲線の下の部分を除いた下の部分の三角形となります。売上から費用を除いた部分(利潤)とされます。
生産者余剰 = 四角形OXEP - 台形OXES = 三角形ESP
そして、総余剰は消費者余剰と生産者余剰を足し合わせたものなので、
総余剰 = 消費者余剰 + 生産者余剰 = 三角形SED
となります。
死荷重
ここで、政府の政策の影響を見ましょう。
従量税を課すとした状態を表したのが、下図です。
従量税により、均衡量はAからBに減少し、均衡価格は企業はA、消費者Bに直面することになります。
このとき、政府は税金を得ることができ、総余剰は、
総余剰 = 消費者余剰 + 生産者余剰 + 税収
となりますが、消費者余剰・生産者余剰いずれも減少し、課税がなかったときに比べて、「死荷重」という経済損失が生じていることが分かります。
このように、課税という政策は、経済全体として、マイナスの影響を与えることになります。
最後に
以上は、図による説明ですが、数学的に知りたい方は、次も参照してください。