はじめに
ミクロ経済学の経済厚生における議論で、「消費者余剰」が出てきます。
生産者余剰と一緒に説明され、よくグラフでは、消費者余剰は三角形の上部分、生産者余剰は下部分といった感じです。
何となく、需要曲線の下の部分について、価格×需要量を差し引いたものとして理解しているのではと思います。
ここでは改めて、消費者余剰について、数学的に説明をしたいと思います。
数学的な導出方法
定義
消費者余剰$CS$は、教科書的には回りくどい言い方をしている場合がありますが、一言でいえば、
「消費者が全く消費をしない状態から、財を消費したときに得られる効用の増加分」
のことです。
消費者が何もしないときと比べて、消費をしたらどれだけ効用が高まるかを見ていることになります。
これを需要量が$x$のときの効用関数を$U(x)$とすると、消費者余剰は、
$CS = U(x) \; – \; U(0) \cdots (1)$
のように定義されます。
導出方法
$(1)$式を計算すればいいだけの話ですが、ここで問題が生じます。なぜなら、効用関数は一般形であり、特定化がなされておらず、これ以上、解きようがないからです。
そこで、$m$を貨幣として、貨幣を保有することでも効用が得られるとして、次のように効用関数を定義します。
$U(x, m) = V(x) + m \cdots (2)$
また、$x$財の価格を$p$、予算を$E$とすると、予算制約式は、次のようになります。
$E = px + m \cdots (3)$
$(3)$式を見て分かりますが、全く消費しないとき($x=0$)には、$E = m$となり、予算はすべて貨幣という形に保有することになります。
$(1)$式について、この特定化された効用関数を当てはめると、消費者余剰は
$CS = U(x , m) \; – \; U(0 , m)$
となるので、$(2)(3)$式を使うと、
$CS = U(x , E \; – \; px) \; – \; U(0 , E) = [V(x) + E \; – \; px ] \; – \; [V(0) + E]$
から、
$CS = V(x) \; – \; V(0) \; – \; px$
を得ることができます。
ここで、積分の公式から、
$\displaystyle V(x) \; – \; V(0) = \int^x_0 V'(z) dz$
から、
$\displaystyle CS = \int^x_0 V'(z) dz \; – \; px \cdots (4)$
を得ることができます。
ポイント
まずは、$(2)(3)$式から、$U(x, m) = V(x) + E \; – \; px$が成り立つので、消費者が効用の最大化を図ったとき、
$\displaystyle \dfrac{\partial U}{\partial x} = V'(x) \; – \; p = 0$
から、
$p = V'(x)$
という需要関数を得ることができます。
そして、$(4)$式を振り返ると、消費者余剰は、需要関数を$0$から$x$の範囲で積分したものから、$px$を差し引いたものとなっています。
なお、あくまでも効用関数を特定化したものであることに注意が必要です。
参考
武隈愼一『ミクロ経済学』