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ワルラス的調整過程とマーシャル的調整過程

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投稿ミクロ経済学初級
経済学において、需要と供給が均衡に向かうにあたり、代表的なものとして、ワルラス的調整過程とマーシャル的調整過程というものがあります。この2つの調整過程について、違いも含めて説明します。
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はじめに

 経済学において、需要と供給が一致するように価格や量が決定されるとされます。

 図でいえば、下図のような需要曲線と供給曲線が交わるところで、価格や量が均衡するとされます。



 ただ、どのような財・サービス市場においても、瞬時に価格や量が均衡するとは限りません。
 消費者や企業などにおいて、価格や量の調整を行った末に、均衡に達すると考えられます。

 ところで、このような調整はどのように進むのでしょうか。

 この調整過程について、代表的なものとして、「ワルラス的調整過程」「マーシャル的調整過程」の2つがあります。

※この他に、若干数学的になりますが、くもの巣過程というものもあります(知りたい方は、「くもの巣モデル(くもの巣過程)の解説・説明」)

2つの調整過程

ワルラス的調整過程

 ワルラス的調整過程においては、ある価格について、供給が超過していれば、価格が下がり、需要が超過していれば、価格は上昇し、均衡に向かうというものです。

 下図においては、価格P1では超過供給が生じています。そこで、セリ人はより低い価格を供給者と需要者に提示し、価格が低下します(なお、必ずしもセリが行われるわけではないので、セリ人がいない可能性もありますが、いわゆる「神の見えざる手」でこのような調整が行われます)。
 
 価格P2では逆に超過需要が生じており、価格が上昇します。

 このようなプロセスの末、価格と量が均衡に至るとされます。


マーシャル的調整過程

 マーシャル的調整過程では、供給者はすぐには生産を調整できないものとします。
 そうすると、ワルラス的調整過程とは違い、まずはある生産量のもとで、価格の状態がどうかが問題になります。

 下図においては、生産量X1では需要者が支払っていい価格と供給者が提示している価格に差があり、前者のほうが高くなっています。そうすると、供給者においては、価格を上げても売れるため、生産を増加します。

 逆に、生産量X2では需要者が支払っていい価格よりも供給者が提示している価格が上回っています。供給者においてはこのままの価格では売れないため、生産を減らします。

 このようなプロセスの末、価格と量が均衡に至るとされます。


ポイント

 以上から、ワルラス的調整過程では価格を基準にして量が調整されるのに対し、マーシャル的調整過程では量を基準にして価格が調整されるとされます。

 ただいずれにおいて、最終的には均衡に向かい、結果としては同じになります。

市場均衡が不安定な場合

 安定に向かう場合には、上記のように結果は同じになりますが、均衡に向かわず、不安定な場合にはこの2つの調整過程で違いが生じます。

需要曲線が右上がり

 ギッフェン財の場合のように、下図のような右上がりの需要曲線を考えましょう。


 このとき、ワルラス的調整過程を考えると、価格P3では超過需要が生じており、価格はどんどん上がり、逆に価格P4では超過供給が生じているので、価格はどんどんと下がります。

 この結果、この財・サービス市場では均衡に達することはありません。
 (なおこの場合でも、マーシャル的調整過程では均衡に向かいます)

供給曲線が右下がり

 外部性があったり収穫逓増の場合のように、下図のような右下がりの供給曲線を考えましょう。



 このとき、マーシャル的調整過程を考えると、生産量P3では超過供給価格となっており、供給価格のほうが需要価格よりも高くなっており売れませんので、供給者は生産量を減らしていきます。逆に、生産量X4では、超過需要価格となっており、需要価格のほうが供給価格よりも高いので生産者はどんどん生産を増やしていきます。

 この結果、この財・サービス市場では均衡に達することはありません。
 (なおこの場合でも、ワルラス的調整過程では均衡に向かいます)

まとめ

 以上から、一般的な需要曲線が右下がり、供給曲線が右上がりの状況では、ワルラス的調整過程・マーシャル的調整過程いずれでも、均衡価格・均衡量に向かいます。

 しかし、需要曲線が右上がり、供給曲線が右下がりの場合には、市場が不安定化したり、調整過程により結果が異なることになります。
 なお、この場合には、それぞれの曲線の傾きが重要なので、注意しましょう。

参考

  奥野正寛・鈴村興太郎『ミクロ経済学Ⅱ

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