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独占市場と完全競争市場の違いをほぼ数式なしで説明します

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投稿ミクロ経済学入門
ミクロ経済学において、独占市場と完全競争市場の違いについて、ほぼ数式なしで説明します(ほぼというのは、結論部分は数式で表すからです)。
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概要

 独占市場について勉強すると、完全競争市場との違いが気になります。
 とはいえ、数式や図が出てきたりして、入門者にはややこしい感じがするので、それらを使わずに、これらの考えのエッセンスを説明したいと思います。

前提

 独占市場・完全競争市場の違いを説明する前に、前提条件を説明します。
 前提条件には、共通のものとそれぞれの市場固有のものがあります。

【共通】
 独占市場・完全競争市場それぞれに共通する前提は、次のようなものです。

  「生産量を増やしていくと、その追加的な費用は増加していく」(前提1)

 ここで、「追加的」というのは、現在の生産量から、1単位生産量を増やしたときという意味です。生産量が少ないうちは余力があり、生産量を少し増やしても費用はあまり増加しませんが、生産量が多くなると余力がなくなり、生産量を少し増やすにも多くの費用がはっせいするということです。

【完全競争市場】
 完全競争市場における企業行動の前提は、次のようなものです。

  「企業は価格をコントールできない」(前提2)

 いわゆる「プライステーカー」というもので、市場の価格を見て、自社の生産量を決定します。

【独占市場】
 独占市場における企業行動の前提は、次のようなものです。

  「独占企業は価格をコントロールできる」(前提3-1)

  「ただ、消費者は価格が安いと多く買うが、価格が高いと少ない量しか買わない」(前提3-2)

 「前提3-1」が大きなポイントで、独占企業と完全競争企業の行動の違いです。完全競争においては企業は価格について何もできないが、独占することで企業は価格も自由に決められるようになるというわけです。

 「前提3-2」は、一般的な消費者行動といえるでしょう。ただ、完全競争市場においては、最終的にマーケットで需給が一致し価格が決まるので、企業は消費者の行動を考える必要がありません(言い換えれば、消費者の行動が反映された「価格」という情報だけで済むということです)。
 しかし、独占市場において、企業は価格も決定できるので、このような消費者行動も配慮に入れる必要があります。

企業行動

 上記の前提をベースに、それぞれの市場における企業が、利潤が最も大きくなるように行動するとします。

【完全競争市場】
 企業にとっては、「前提2」のもと、市場で決まった価格を受け取り、生産を行います。価格は一定なので、できるだけ多く作ったほうが得です。

 ただ、無限に多く作ることはできません。「前提1」から、生産量を増やすほど、追加的な費用は多くなってしまいます。ここで企業としては、ある生産量の水準から、1単位多く生産を増やしたとき、その追加費用と生産1単位分の価格の比較が重要になります。追加費用よりも価格のほうが高ければ、問題はありませんが、追加費用が価格を超えると赤字になります。

 このような結果、完全競争市場においては、企業は、生産量を追加的に増やしたとき、その費用の増加と価格が等しい水準で生産量を決めたほうがいい形になります。

 経済学的に言えば、この追加的な費用は「限界費用」と呼ばれ、

  価格 = 限界費用

を満たすように企業は生産量を決めることが、最も利潤が大きくなり、企業にとって最適と言えます。

【独占市場】
 独占企業においては、「前提3-1」から、自由に価格を決めることができます。ただやみくもに価格を引き上げても「前提3-2」から、消費者は多くは買ってくれません。とはいえ、多く生産すると、消費者はたくさん買ってくれますが、価格は下がってしまいます。言い換えれば、独占企業は、生産量を増やせば収入(=生産量×価格)は増えていきますが、あまり増やしすぎると価格が安くなりすぎて、収入は減っていくことになります。

 そこで、独占企業にとっては、収入(=生産量×価格)をどうするかが、問題になります。

 ただ、独占企業は価格を自由に決められますが、「前提3-2」から、生産量を増減することで、価格を変えることになります。ですので、独占企業にとっては、生産量のことだけを考えればよく、収入が最も大きくなるような生産量がどうなのかが重要になります。

 他方、生産には「前提1」から、生産量を増やしていくと、追加的にかかる費用も大きくなります。ですので、この効果も考えていく必要があります。

 これらのことから、生産量を増やしていき、ある生産量の中で、追加的に1単位生産を増加させたとき、収入が増加する額と費用が増加する額が問題になります。前者の収入が増加する額のほうが大きければ、黒字なので問題はありませんが、後者の費用が増加する額のほうが大きければ、赤字です。

 ですから、追加的に1単位生産を増やしたとき、収入が増加する額と費用が増加する額が一致するような水準で、生産量を決めることが、独占企業にとっては、利潤が最も大きくなります。

 経済学的に言えば、この収入の増加額は「限界収入」と呼ばれ、(完全競争の場合と同様に)この費用の増加分は「限界費用」と呼ばれ、

  限界収入 = 限界費用

を満たすように企業は生産量を決めることが、最も利潤が大きくなり、企業にとって最適と言えます。

独占市場と完全競争市場の違い

 上記のように、企業行動の違いから、独占市場と完全競争市場では、結果は異なってきます。
 
【最適化の条件】
 完全競争市場の企業では「価格 = 限界費用」となりますが、独占企業では「限界収入 = 限界費用」となるように、生産量を決めることが、最も利潤が上がる形になります。

【価格・生産量】
 完全競争市場の企業では、価格は所与のもと、生産量を決めることになりますが、独占企業においては、生産量を抑えてその分、価格を吊り上げることができます。
 このことから、完全競争市場と比べて、独占市場では生産量は少なくなり、価格は高くなります。

以上の違いをまとめると、次のようになります。

完全競争市場独占市場
価格への態度プライステーカー(需要を見ながら)価格決定可能
利潤最大化の条件価格 = 限界費用限界収入 = 限界費用
価格(*)安い高い
生産量(*)多い少ない

(*)については、もう1つの市場に比べてのものです。

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