はじめに
産業連関表において、生産量を$ \mathbf{X}$、最終需要を$ \mathbf{F}$、投入係数行列を$ \mathbf{A}$としたとき、次のようなものが基本となります。
$ \mathbf{X} = (\mathbf{I} – \mathbf{A})^{-1} \mathbf{F} \quad \cdots \quad (1)$
産業連関表を少しでも勉強したことがあれば、見たことがある式だと思います。
ただ当然ながら、この基本モデルを拡張したものが、いくつもあります。
ここでは、それらのいくつかを紹介します。
産業連関表におけるモデル
競争輸入型モデル
$ (\mathbf{I}-\mathbf{A})^{-1}$型
基本モデルは、あくまでも国内需要をもとにしたものですが、外国と貿易を行っているときには、その影響を受けます。
そこで、国内需要と輸入による需要を分け、輸入ベクトルを$ \mathbf{M}$とすると、次のようなものです。
$ \mathbf{X} = (\mathbf{I} – \mathbf{A})^{-1} (\mathbf{F} – \mathbf{M}) \quad \cdots \quad (2)$
逆行列部分は、基本モデルと変わりませんが、最終需要が国内と輸入で分離されています。
$ (\mathbf{I}-\mathbf{A} + \hat{\mathbf{M}})^{-1}$型
輸入が国内生産に比例しているとし、行別の輸入係数を$ \hat{\mathbf{M}}$としたとき、次のようなものになります。
$ \mathbf{X} = (\mathbf{I} – \mathbf{A} + \hat{\mathbf{M}})^{-1} (\mathbf{F} ) \quad \cdots \quad (3)$
$ (1)(2)$式と異なり、逆行列に$ \hat{\mathbf{M}}$が入っている形になっています。
$ (\mathbf{I}-(\mathbf{I} – \hat{\mathbf{M}})\mathbf{A})^{-1}$型
最終重要を国内最終需要$ \mathbf{Y}$と輸出$ \mathbf{E}$に分けて、行別の輸入係数を$ \hat{\mathbf{M}}$としたとき、次のようなものです。
$ \mathbf{X} = (\mathbf{I}-(\mathbf{I} – \hat{\mathbf{M}})\mathbf{A})^{-1} ((\mathbf{I} – \hat{\mathbf{M}}) \mathbf{Y} + E) \quad \cdots \quad (4)$
というものです。
これは、輸入が国内総需要に比例しているとした場合のものです。
非競争輸入型モデル
$ (\mathbf{I}-\mathbf{A^d})^{-1}$型
最終需要を国内需要と輸入に分けて、国内最終需要を$ \mathbf{F^d}$、投入係数行列を$ \mathbf{A^d}$とすると、次のようなものになります。
$ \mathbf{X} = (\mathbf{I}-\mathbf{A^d})^{-1} \mathbf{F^d} \quad \cdots \quad (5)$
最後に
産業連関表は、国や都道府県などで作成・公表されています。
例えば、国では、総務省のサイトで産業連関表を見ることができます。
総務省「産業連関表」
そして、$ (\mathbf{I}-\mathbf{A})^{-1}$型、$ (\mathbf{I}-\mathbf{A} + \hat{\mathbf{M}})^{-1}$型、$ (\mathbf{I}-\mathbf{A^d})^{-1}$型の3つのモデルが公表されています。
参考
宮沢健一『産業連関分析入門』