はじめに
ミクロ経済学における消費者行動を考えるとします。
$x$財と$y$財があり、それぞれの価格を$p_x \, , \, p_y$、所得を$m$とすると、予算制約式
$p_x x + p_y y = m \quad \cdots \quad (1)$
のもと、効用関数
$u(x \, , \, y) \quad \cdots \quad (2)$
を最大化することになります。
そして、効用最大化の条件は、
$\dfrac{u_1}{u_2} = \dfrac{p_x}{p_y} \quad \cdots \quad (3)$
となります。
なお、
$u_1 = \dfrac{\partial u}{\partial x} \quad , \quad u_2 = \dfrac{\partial u}{\partial y}$
です。
ところで、$(3)$式を導出・求める方法としては、いくつかのやり方があるので、それらを説明したいと思います。
求め方
代入
最も簡単な方法としては、式が2つあるので、代入して、最大化を行うというものではないかと思います。
$(1)$式を$(2)$式に代入し、$y$をキャンセルすると、
$u \left( x \, , \, \dfrac{m \; – \; p_x x}{p_y} \right)$
となり、$x$で微分し、ゼロとすると、
$u_1 \; – \; \dfrac{p_x}{p_y} u_2 = 0$
なので、式変形すると、$(3)$式を得ることができます。
傾き
効用最大化が行われるときには、効用関数の無差別曲線と予算制約式が接し、それぞれの傾きは等しくなります。
図で、効用最大化が説明されるときのパターンですが、これを数式的に考えます。
$(1)$式について、式変形すると、
$y = \dfrac{m \; – \; p_x x}{p_y} = \dfrac{m}{p_y} \; – \; \dfrac{p_x}{p_y}x$
なので、予算制約式の傾きは、次のようになります。
$- \; \dfrac{p_x}{p_y}$
他方、効用関数の無差別曲線については、効用が一定として、$\bar{u}$を考えると、
$u(x \, , \, y) = \bar{u}$
ですが、これを全微分すると、
$u_1 dx + u_2 d y = 0$
となり、次のように無差別曲線の傾きを得ることができます。
$\dfrac{d y}{dx} = – \; \dfrac{u_1}{u_2}$
これと、上記の予算制約式の傾きが等しくなるので、$(3)$式を得ることができます。
ラグランジュ乗数法
ラグランジュ乗数法を使って、効用最大化の条件を得ることができます。
ラグランジュアンを$\lambda$とすると、$(1)(2)$から
$L = u(x \, , \, y) \; – \; \lambda (m \; – \; p_x x\; – \; p_y y)$
であり、一階条件を求めると、
$u_1 + \lambda p_x = 0 \quad , \quad u_2 + \lambda p_y = 0$
であり、この2式から、$\lambda$をキャンセルすると、$(3)$式になります。
加重限界効用均等の条件
最後に、若干、イレギュラー(?)なやり方を説明します。
価格1円当たりで評価した限界効用は、$x$財、$y$財それぞれについて、
$\dfrac{u_1}{p_x} \quad , \quad \dfrac{u_2}{p_y}$
となります。ここで例えば、
$\dfrac{u_1}{p_x} > \dfrac{u_2}{p_y}$
となっているとき、消費者は財$x$からの限界効用のほうが高く評価していることになります。
そうすると、この消費者は、更に財$x$の消費を増やそうとするでしょう。ただ、限界効用逓減の法則から、財$x$の消費を増やせば、限界効用は小さくなります。
このようなプロセスを経て、価格1円当たりで評価した限界効用は、財$x$と財$y$は等しくなります。
すなわち、
$\dfrac{u_1}{p_x} = \dfrac{u_2}{p_y}$
であり、これを変形すると、$(3)$式を得ることができます。
なお、このように価格で限界効用を測るという考えは、「加重限界効用均等の条件」と言います(詳しくは、「効用最大化条件の異なる見方である「加重限界効用均等の条件」について」を見てください」)。
参考
武隈愼一『ミクロ経済学』