はじめに
経済学を学んでいると、「合成財」という概念が出てきます。
合成財とは、複数の財・サービスをまとめた抽象的な財・サービスのことを意味します。
あくまでも、理論上の抽象概念なので、何らかの物質的な「合成財」という財・サービスがあるわけではありません。
しかし、理論的にモデルを考えたり、理論的な説明において、合成財という概念は便利なので、経済学において使われています。
例
合成財という概念がなぜ使われるのかということについて、例で説明しましょう。
ある消費者が、次の4つの食べ物を消費しているとしましょう。
・せんべい
・りんご
・みかん
・すいか
この消費者の消費行動を分析しようとしたとき、4つの財について考える必要があるのですが、非常にややこしいです。
例えば、りんごの消費が増えたとき、せんべい・みかん・すいかへのそれぞれの影響を考える必要があります。同様に、みかんの消費が増えたとき、せんべい・りんご・すいかへのそれぞれの影響を考える必要があるなど、多くのパターンが生じ、議論が複雑になります。
このとき、せんべいを中心に分析したいと思ったとしましょう。
せんべいが中心なので、せんべいへの消費の増減に対して、りんご・みかん・すいかへの影響を考えるだけで済みます。
しかし、それでもまだややこしいと思ったとき、せんべいとそれ以外で考えたら、便利です。
つまり、
・せんべい
・果物(りんご、みかん、すいか)
として、議論したらいいことになります。そしてまさしく、この果物が合成財になります。
議論としては、せんべいと果物の関係だけを考えればいいので、楽になることから、合成財という概念が使われるわけです。
特に、公共経済学においては、政府などが供給する公共財の分析が重要になります。ただ、財は企業なども供給しており、いろいろな財があることになります。
このとき、
・公共財
・企業による財1
・企業による財2 など
とすると、議論が複雑になります。そこで、企業により供給される財を私的財という合成財でまとめて、
・公共財
・私的財
という形で、分析されることが多いです。そして、公共財が分析のメインなので、議論の本質は変わらないことになります。
このように、合成財という概念を導入して、議論・分析を簡略化しようとしているわけです。