補償需要関数の求め方
通常の需要関数が、予算が一定のもとで効用を最大化するのに対して、補償需要関数では、効用が一定のもとで費用を最小化します。
2財$x \, , \, y$の価格を$p_x \, , \, p_y$とし、効用関数を$u(x \, , \, y)$とすると、補償需要関数では、次のような費用最小化問題を解くことになります。
$\dsiplaystyle \min_{x \, , \, y} p_x x + p_y y$
$s.t. \quad u(x \, , \, y) = \bar{u}$
ここで、一定の効用は、$\bar{u}$で表しています。
この費用最小化問題を解くために、ラグランジュ乗数を$\lambda$とし、次のようなラグランジュ関数を定義します。
$L = p_x x + p_y y + \lambda(\bar{u} \; – \; u(x \, , \, y))$
そして、この$L$を$x \, , \, y \, , \, \lambda$で微分し$0$とすると、一階の条件が得られます。
$\dfrac{\partial L}{\partial x} = p_x \; – \; \lambda u_x = 0 \quad \cdots \quad (1)$
$\dfrac{\partial L}{\partial y} = p_y \; – \; \lambda u_y = 0 \quad \cdots \quad (2)$
$\dfrac{\partial L}{\partial \lambda} = \bar{u} \; – \; u(x \, , \, y) = 0$
$(1)(2)$式から、$\lambda$をキャンセルすると、
$\dfrac{u_x}{u_y} = \dfrac{p_x}{p_y} \quad \cdots \quad (3)$
を得ることができます(ここで、$u_x = \partial u / \partial x$、$u_y = \partial u / \partial y$です)。
ところで、ここからが躓くポイントかと思います。
なぜなら、効用関数$u(x \, , \, y)$が特定化されていないので、実際にどのような式になるのかは不明確だからです。
ただ、上記の式を満たすように、$p_x \, , \, p_y \, , \, \bar{u}$が変化すれば、$x \, , \, y$が決まるということは分かります。
そこで、次のような補償需要関数を定義できます。
$x = D(p_x \, , \, p_y \, , \, \bar{u})$
$y = D(p_x \, , \, p_y \, , \, \bar{u})$
あくまでも、導出ではなく、定義である点に注意です。導出することはできないのですが、上記のような$p_x \, , \, p_y \, , \, \bar{u}$が変化すれば、$x \, , \, y$が決まるということが分かっているので、この関係を式として、定義したということです。
例
一般的な補償需要関数の求め方は、上記の通りですが、イメージをつけてもらうため、例として、$u(x \, , \, y)$を特定化した場合を考えましょう。一般形では導出はできないのですが、特定化すれば、導出も可能な場合があるからです。
効用関数が$\sqrt{xy}$とした場合を考えると、費用最小化問題は、
$\min_{x \, , \, y} p_x x + p_y y$
$s.t. \quad \sqrt{xy} = \bar{u}$
となります。
ここで、上記の費用最小化問題を解いたときの$(3)$式を使いましょう。
$\displaystyle u_x = \frac{\partial u}{\partial x} = \frac{1}{2} x ^{-1/2} y^{1/2}$
$\displaystyle u_y = \frac{\partial u}{\partial y} = \frac{1}{2} x ^{1/2} y^{-1/2}$
なので、これらを$(3)$式に代入しましょう。
$\dfrac{p_x}{p_y} = \dfrac{1/2 x ^{-1/2} y^{1/2}}{1/2 x ^{1/2} y^{-1/2}} = \dfrac{y}{x}$
となり、$p_x / p_y = x / y$という式が得られます。
これを、$y$を消すため、効用関数$\sqrt{xy} = \bar{u}$に代入すると、$x$の補償需要関数
$x = p_x^{-1/2} p_y^{1/2} \bar{u}$
が得られ、これを再び、効用関数$\sqrt{xy} = \bar{u}$に代入すると、$y$の補償需要関数
$x = p_x^{1/2} p_y^{-1/2} \bar{u}$
が得られます。
いずれの補償需要関数を見ても、$p_x \, , \, p_y \, , \, \bar{u}$により、$x \, , \, y$が決まるということは分かります。