はじめに
マクロ経済学において、どのように投資が決定されるのかは、1つのテーマです。そして、資本ストックが最適な水準になるように投資が行われるなど、いくつかのモデルがあります。
ただ、企業の価値と資本ストックとの関係という少し違う視点で、投資がどうなるかを考えたものに、「トービンのq」があります。
トービンのqでは、
・平均のq
・限界のq
の2つがあり、それぞれについて、説明していきたいと思います。
トービンのq
平均のq
まず、企業価値を$V$、株価総額を$S$、負債総額を$D$とすると、
$V = S + D$
であり、資本の再取得費用を$C$とすると、平均のqは、次のように定義されます。
$q = \dfrac{V}{C}$
式から分かるように、株価総額と負債総額を足した企業価値を資本の再取得費用で割ったものになっています。
そして、$q$の大小で、企業は投資を行うかどうかを考えます。
($q>1$のとき)
このときには、企業価値$V$のほうが資本の再取得費用$C$よりも大きいので、企業にとっては、現在よりも投資を行うことで、より多くの利益が得られることから、$q$が$1$になるまで、投資が継続されます。
($q<1$のとき)
このときには、資本の再取得費用$C$よりも企業価値$V$のほうが大きいので、企業にとっては、企業価値以上の資本ストックを保有していることになるので、$q$が$1$になるまで、投資を減らすことになります。
以上から、平均のqにおいては、次のようになります。
$q>1$のとき、投資が行い、資本ストックを増やす
$q<1$のとき、マイナスの投資が行い、資本ストックを減らす
限界のq
限界のqは、平均のqの限界値をとったもので、次のように定義されます。
$q = \dfrac{d \, V}{d \, C}$
そして、平均のqと同様に、
$q>1$のとき、投資が行い、資本ストックを増やす
$q<1$のとき、マイナスの投資が行い、資本ストックを減らすとなります。
2つのq
上記のように、2つのqがありますが、理論的には限界のqのほうが望ましいとされています。
なぜならば、投資は、追加的に資本を増減させるものなので、それを表している限界のqのほうが、投資の概念に合っていると考えられるからです。
ただし、実証的には、平均のqは容易に計算でき、利便性という観点からは、平均のqのほうが勝っています。
なお、一定の条件下では、この2つは一致することになります。
参考
二神孝一・堀敬一『マクロ経済学』
中村保・北野重人・地主敏樹『マクロ経済学』