概要
かつて、マクロ経済学といえば、ケインズ経済学がベースとなっていました。
現在は、ミクロ的基礎づけが一般的で、ケインズ経済学は古いものという感じもあります。
ただそれでも、マクロ経済学では、やはりケインズ経済学を知る必要があり、IS-LMモデルは学んでおく必要があるものといえるでしょう。また、公務員試験などでは、DGSEなどはほとんど登場することはなく、やはりIS-LMモデルが出題されているという点もあり、IS-LMを学ぶことは非常に重要です。
そこで、IS-LMモデルについて、簡単に説明します。
モデル
IS-LMモデルでは、財市場と貨幣市場を考えます。
財市場
産出量を$ Y$、消費を$ C$、投資を$ I$、政府支出を$ G$とします。
在庫がないとすると、支出と産出量は一致するので、
$ Y = C + I + G \quad \cdots \quad (1)$
が成立します。
このとき、消費$ C$は基礎消費$ a$と可処分所得に依存するものとし、税金を$ T$とすると、
$ C = \bar{C} + c(Y – T) \quad \cdots \quad (2)$
となります。ここで、$ c$は限界消費性向です。
投資については、実質利子率$ i$が高いと投資は減り、利子率が低いと投資が増えるとして、線形の投資関数を考えると、
$ I = \bar{I} – b i \quad \cdots \quad (3)$
となります。
そして、$ (2)(3)$式を$ (1)$式に代入すると、
$ \displaystyle i = \dfrac{c-1}{b}Y + \dfrac{\bar{C} + \bar{I} + G -cT}{b} \quad \cdots \quad (4)$
となり、IS曲線を導出することができます。
ここで、$ 0 \lt c \lt 1 \, , \, b \gt 0$なので、$ Y$の係数に着目すると、
$ \displaystyle \dfrac{c-1}{b} \lt 0$
であるので、IS曲線は右下がりになります。
貨幣市場
貨幣量を$ M$、物価を$ P$とすると、実質的な貨幣供給量は、
$ \displaystyle \dfrac{M}{P} \quad \cdots \quad (5)$
となります。
他方、貨幣需要は、取引需要と資産需要に分けられると考えます。取引需要は、実際の取引に応じて必要とされる貨幣需要で、産出量に比例すると考えます。また、資産需要は、資産を貨幣として持つかどうかによって変動する貨幣需要で、名目利子率$ r$が低くなると債券価格が上昇し、敢えて債券を買う必要はないので、貨幣需要が増加するというものです。
これらを考えると、貨幣重要は、
$ e Y – f r \quad \cdots \quad (6)$
のように表すことができます。
そして、貨幣市場が均衡するときには、貨幣供給と貨幣需要が一致するため、$ (5)(6)$式から、
$ \displaystyle \dfrac{M}{P} = e Y – f r$
となり、変形すると、次のようなLM曲線が得られます。
$ \displaystyle r = \dfrac{e}{f} Y – \dfrac{M}{fP} \quad \cdots \quad (7)$
ここで、$ e \gt 0 \, , \, f \gt 0$であることから、$ (7)$式の$ Y$の係数は
$ \displaystyle \dfrac{e}{f} \gt 0$
であり、LM曲線は右上がりの曲線になります。
IS-LM曲線
以上で、IS曲線とLM曲線で財市場と貨幣市場が均衡しており、この2つの曲線が交わるところで、産出量と実質利子率が決定することになります。
なお、LM曲線においては、名目利子率$ r$を使っていますが、物価上昇率を$ \pi$として、フィッシャー方程式を考えると、
$ r = i – \pi$
が成立していることに注意してください。