節約のパラドックス
通常、限界貯蓄性向が高まれば、貯蓄は増加します。
しかし、所得に応じて投資が増えるという誘発投資が存在すれば、必ずしもそうならないことがあります。
すなわち、
「誘発投資が存在する場合、限界貯蓄性向が上昇すると、貯蓄は低下する」
という状況があり、これを「節約のパラドックス」と言います。
限界貯蓄性向が高まるのに、貯蓄が低下するという逆説的な命題となっています。、
なぜパラドックスが生じるのか
直観的には、限界貯蓄性向が高まるため、所得は減少してしまいます。他方、投資は所得に応じて増減するため、投資も減少することになります。そして、貯蓄=投資という関係から、貯蓄が減少することになります。
ただ分かりにくいと思うので、横軸に所得、縦軸に投資と貯蓄をとった図で説明すると、次の通りです。
投資は所得に応じて増加するので、右上がりの曲線になります。また同様に、貯蓄も所得に応じて増加するので右上がりの曲線になります。
そして当初は、投資曲線と貯蓄曲線sが交わるE点にあるとします。このときの所得はY、貯蓄はSとなっています。
限界貯蓄性向がsからs’に上昇したとしましょう。貯蓄曲線はsからs’に代わります。均衡点はE点からE’点となり、所得はY’、貯蓄はS’となることが分かります。
この結果、限界貯蓄性向が上昇した結果、貯蓄はSからS’へと減少してしまいます。
独立投資の場合
このような現象が生じる大きなポイントは、所得に応じて投資が変わる誘発投資であるという点です。
ただ、所得とは無関係な独立投資の場合には、上記の図では投資曲線は水平になり、限界貯蓄性向が変化しても、所得は増減しますが、貯蓄は変化しません。