規模に関して収穫一定
経済学を学んでいると、規模に関して収穫一定(CRS:Constant Returns to Scale)という言葉が出てくると思います。
定義としては、
「生産活動において、各生産要素をm倍したとき、生産量もm倍になるとき、規模に関して収穫一定である」
といったところでしょうか。
言葉として難しく、何となく分かりづらい感じがあります。
ただ、分かりやすい説明をすれば、
「工場などを、クローンで作れるとき、規模に関して収穫一定である」
と言えます。
例えば、A工場というものがあり、5台の機械、作業員5人で、財を1000作っているとしましょう。
これと同じようなB工場を作り、5台の機械、作業員5人を用意して、財を1000を作れるとき、この企業(生産者)は、「規模に関して収穫一定」であると言えます。
同様に、同じようなC工場を作っても、財を1000を作れるとき、規模に関して収穫一定とされます。
A工場のみ … 機械5台 作業員5人 ⇒ 生産量1000
A工場・B工場 … 機械10台(5台×2) 作業員10人(5人×2) ⇒ 生産量2000(1000×2)
A・B・C工場 … 機械15台(5台×3) 作業員15人(5人×3) ⇒ 生産量3000(1000×3)
直観的に分かりやすく、ある意味、「当たり前!でしょ」と思うかもしれません。
そのため、経済学的にも、「規模に関して収穫一定」という言葉で、定義づけられているわけです。
規模に関して収穫一定は、非現実的?
ところで、現実の経済は、このような状況があるでしょうか。
例1
例えば、米作りを考えましょう。
一定の人数・面積で、お米を作っていて、クローンとして、同じような農地を用意して、同じ人数の従業員を用意しても、生産量は倍にはならないでしょう。
なぜなら、農地はそれぞれの農地で土壌が異なるため、生産量は変わってくると予想されます。
通常は、農家は良い土壌から、米作りを行うので、新たに農地を用意しても、現状の農地よりはあまり良くない土壌の農地で生産を行うことになります。
この結果、同じような農地を用意しても、現状よりも生産量は少なくなると考えられます(クローン失敗!)。
そして、このような状況を「規模に関して収穫逓減」と言います。
例2
そもそも、現実の経済を考えたとき、そのようなことを行う企業はあるでしょうか。
新たな工場を建てるときには、新たな設備を入れたり、作業効率を改善するため、現状の工場の問題点を見直して、工場のレイアウトなどを考えるでしょう。
また、これまでは1つの工場ですべての工程を行っていましたが、新たに工場を建てるときには、既存工場をA工程、新規工場にはB工程を担わせるといった形にするかもしれません。
このように、企業はクローンを作ろうとはしないでしょうし、同じような工場を作っても、既存の工場よりは効率はよく、生産量は新規工場のほうが上回るでしょう。
そして、このような状況を「規模に関して収穫逓減」と言います。
まとめ
規模に関して収穫一定とは、生産活動についてクローンが成立する状態と言えます。
そして、現実には当てはまりにくい感じもありますが、数学的に扱いやすい面もあり、経済学では、「規模に関して収穫逓減」「規模に関して収穫逓増」と同様に、重要な概念です。
数学的や文章で覚えておくよりは、
「同じ工場を2つ作ったら、生産量が2倍になる状況」
ぐらいに、イメージして覚えておいたほうがいいかもしれません。