概要
よく日本経済は、
「需要が不足している」「供給が過剰である」
などと言われます。
経済学的には、この需要不足や供給過剰などといった状況は、「GDPギャップ」や「需給ギャップ」と言われます。
ところで、上記のような話になると、何となくそのように感じてしまいますが、この感覚的な感じでは、実際にGDPギャップが生じているかは、分かりません。
統計的にこのGDPギャップを把握しておく必要があるでしょう。そして、このGDPギャップを簡単に知る方法があります。
GDPギャップ(需給ギャップ)の考え方
そもそも、GDPギャップについて話をする前に、しっかりとGDPギャップの定義を知っておく必要があります。
GDPギャップとは、実際のGDPと潜在的なGDPの差を潜在的なGDPで割った値です。
GDPギャップを$GAP$、実際のGDPを$Y$、潜在的なGDPを$Y^*$とすると、次式のように定義されます。
$\displaystyle GAP = \dfrac{Y \; – \; Y^*}{Y^*} \times 100$
ここで、潜在GDPとは、本来の日本経済が有している供給能力に基づいたGDPです。言い換えれば、経済においては、資本や労働を用いて、生産を行うことになるわけですが、資本や労働を100%用いた場合のGDPが潜在GDPになります。
このとき、上記のGDPギャップの分子で、$Y \; – \; Y^*$がプラスならば、残業や無理に設備などを動かして、供給能力以上のGDPを生み出している状態で、総需要のほうが総供給よりも多いことを示しています。
逆に、$Y \; – \; Y^*$がマイナスならば、供給能力がほうが大きく、人や設備が余っている状態で、総供給のほうが総需要よりも多いことを示すことになります。
つまり、
GDPギャップ > 0 ⇒ 総需要 > 総供給
GDPギャップ < 0 ⇒ 総需要 < 総供給
ということを表しています。
(この意味から、「需給ギャップ」と言われたりもしているわけです)
GDPギャップ(需給ギャップ)の知り方
そしたら、どのようにGDPギャップを知ったらいいのでしょうか。
「答えは、日本銀行が公表している」
ということです。
日本銀行では四半期に1回、GDPギャップ(需給ギャップ)を公表しており、日本銀行のサイトを見れば、すぐにGDPギャップを知ることができます。
ありかとしては、下の通りです。
日本銀行「需給ギャップと潜在成長率」
非常に簡単です。
実際のGDPギャップ(需給ギャップ)
それでは、実際のGDPギャップを見てみましょう。
下のようなグラフで、GDPギャップを見ることができます(エクセルのデータもあります)。
需給ギャップ(2022年7月公表)
1980年代後半から1990年代前半までは、バブル経済で大きくプラスになっており、需要のほうが大きく、供給不足になっていることが分かります。その後、上下はありますが、リーマンショップで2009年あたりで大きな落ち込み、需要不足が生じ、2015年あたりまで続いています。アベノミクスのおかげか分かりませんが、2016年頃から、プラスになり、需要のほうが大きくなっています。ちょうど、人手不足などが言われたりしていたのを覚えている人も多いでしょう。ただ、コロナ禍で2020年には一気に落ち込み、需要不足が生じ、現在に至っています。
注意点
上記の日本銀行のデータを見れば、すぐにGDPギャップを知ることができ、便利です。
ただあくまでも、日本銀行が推計した1つのデータであるという点に注意が必要です。
GDPギャップを推計するには、いくつかの方法があり、取り扱うデータによっても、数字は変わってきます。
例えば、上記のGDPギャップの式を考えると、日本銀行では潜在GDPを計算しているように思うかもしれません。
しかし、日本銀行では潜在GDP自体を計算しているのではなく、労働投入や資本投入のギャップを算出し、それらを足し合わせた形で、GDPギャップを計算しています。
この日本銀行の計算方法が間違っているわけではないのですが、直接的に潜在GDPを計算するなど、他にも計算方法があるという点に注意する必要があるということです。
ですので、他にも計算方法がある中で、日本銀行の公表しているGDPギャップは100%正しいとは言えないかもしれないが、概ね正しく便利といったスタンスで、見ていくことが大事だと思います。