はじめに
経済において、あらゆる取引があるため、産業連関表では金額ベースで表示されます。
取引は、
数量×価格
で行われますが、数量は産業ごとに単位が異なるためです。
ただここで問題となるのが、価格の取り扱いです。
例えば、同じ商品でも、生産・販売する人と購入する人では価格が異なります。
また、生産者において、同じ製品を生産していても、生産者によって、取引価格が異なります。例えば、輸出価格と国内価格や電力料金などに相違が生じます。
このとき、産業連関表において、どの価格を用いるのかが問題となり、産業連関分析では4つの価格があるとされています。
4つの価格
生産者価格と購入者価格
まずは、生産者と購入者という違いで区分されるものとして、生産者価格と購入者価格です。言葉の通り、生産者価格は生産者にとっての価格、購入者価格は購入者にとっての価格です。
通常、生産者は販売にあたり、商業マージンを付加して販売します。販売にあたっても、その運賃が生じたりもします。購入者はそれらの商業マージンや運賃が付加された価格で購入することになります。
このため、
購入者価格 = 生産者価格 + 商業マージン + 運賃
となります。
直観的には、購入者価格で評価したほうが分かりやすい気がしますが、産業ごとにマージンが異なったりするため、経済効果を推計するには、生産者価格を用いたほうがよいとされます。
なお、経済効果を推計するにあたって、外生的に与える需要について、それが生産者価格なのか、購入者価格に基づいたものに注意する必要があります。購入者価格によるものならば、生産者価格に直して、生産者価格をベースに、効果を推計することになります。
実際価格と統一価格
同じ産業でも、需要部門において輸出価格と国内価格や電力料金など、取引価格が異なる場合があります。
このとき、実際の取引をそのまま用いる場合と、同じ財については平均的な価格を用いる場合の2つが考えられます。そして、前者を実際価格、後者を統一価格と言います。
ただ統一価格については、平均価格を用いて取引を再計算し、取引表も修正する必要があります。
4つの価格
以上から、概念上、4つの価格が生じることになります。
生産者 | 購入者 | |
---|---|---|
実際 | 生産者実際価格 | 購入者実際価格 |
統一 | 生産者統一価格 | 購入者統一価格 |
実際の産業連関表
実際の産業連関表においては、実際価格をベースに、生産者価格評価表と購入者価格評価表の2つが作成・公表されています。
そして若干、表の中身も異なっています。
(生産者価格評価表)
中間需要 | 最終需要 | 総生産 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
農業 | 工業 | 商業 | ||||
中間投入 | 農業 | 10 | 30 | 0 | 20 | 60 |
工業 | 10 | 100 | 10 | 80 | 200 | |
商業 | 5 | 20 | 2 | 25 | 52 | |
付加価値 | 35 | 50 | 40 | |||
総生産 | 60 | 200 | 52 |
(購入者価格評価表)
中間需要 | 最終需要 | 商業マージン | 総生産 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
農業 | 工業 | 商業 | |||||
中間投入 | 農業 | 12 | 35 | 0 | 25 | -12 | 60 |
工業 | 13 | 115 | 12 | 100 | -40 | 200 | |
商業 | - | - | - | - | 52 | 52 | |
付加価値 | 35 | 50 | 40 | ||||
総生産 | 60 | 200 | 52 |
生産者価格評価表では、商業は1つの需要部門として、取り扱われています。
一方、購入者価格評価表では、需要部門で農業や工業において、マージンが付加されており、需要部門には商業は投入されない形になっています。ただ、商業マージンという列が追加され、総生産としては生産者価格評価法と同じになる形となっています。
参考
宮沢健一『産業連関分析入門』