ブラック・ショールズ・モデル
ブラック・ショールズ・モデルは、理論的なオプション価格を求める方程式です。
式について、説明する前に、変数を定義しておきます。
$S$ : 原資産価格
$K$ : 権利行使価格
$t$ : オプション期間
$r$ : 安全資産利子率
$\sigma$ : 原資産の変動性(ボラティリティ)
$N(\cdot)$ : 標準正規分布の累積密度関数
このとき、コールオプションの価格$C$は、次のようになります。
$C = S N(d) \; – \; K e^{-t} N(d \; – \; \sigma \sqrt{t})$
同様に、プットオプションの価格$P$は、次のようになります。
$P = \; – \; S N(\; – \; d) + K e^{-t} N(\; – \; d + \sigma \sqrt{t})$
なお、いずれにおいても、$d$は、次の通りです。
$\displaystyle d = \left[ \ln \dfrac{S}{K} + \left( r + \dfrac{\sigma^2}{2} \right)t \right] \left/ (\sigma \sqrt{t}) \right.$
式としてはややこしいのですが、原資産価格・権利行使価格・期間・利子率・ボラティリティの数値を与えると、オプション価格が得られるので、便利な式となっています。
計算例
次のような場合のコールオプション価格を求めるとします。
現在価格 : 20,000円
権利行使価格 : 21,000円
オプション期間 : 3ヶ月
安全資産利子率 : 1%
ボラティリティ : 40%
(数値)
まずは、上記の記号に合わせて、これらの値を定義すると、次のようになります。
$S = 20000$
$K = 21000$
$t = 3 / 12 = 0.25$
$r = 0.01$
$\sigma = 0.4$
これらの値を式に代入すれば、オプション価格を求めることができるのですが、計算例なので、分解して求めていきましょう。
($d$の計算)
$d = \left[ \ln \dfrac{20000}{21000} + \left( 0.01 + \dfrac{0.4^2}{2} \right) \times 0.25 \right] \left/ (0.4 \times \sqrt{0.25}) \right. = -0.1315$
($N(d)$の計算)
$N(\cdot)$は、標準正規分布の累積密度関数なので、分布表やエクセルなどで計算します。
(エクセルの場合、「NORM.S.DIST」関数を使います)
$N(d) = N(-0.1315) = 0.4477$
($N(d \; – \; \sigma \sqrt{t})$の計算)
$N(d)$と同様に、エクセルなどで計算を行います。
$N(d \; – \; \sigma \sqrt{t}) = N(-0.1315 \; – \; 0.4 \times \sqrt{0.25}) = N(-0.3315) = 0.3701$
(オプション価格)
以上をもとに、オプション価格を求めます。
$C = 20000 \times 0.4477 \; – \; 21000 \times e^{-0.25} \times 0.3701 = 1200.4$
なお、$e^{-0.25}$についても、エクセルなど計算を行うことができます(エクセルの場合、「exp」関数)。
このことから、この場合のオプション価格は、1,200円になります。
参考
刈屋武昭・佃良彦(編著)『金融・証券数量分析入門』
大村敬一『ファイナンス論』
石村貞夫・石村園子『金融・証券のためのブラック・ショールズ微分方程式』