ホーキンス・サイモンの条件
産業連関表において、2部門あるとき、投入係数を$a_{ij}$としたとき、次のようなホーキンス・サイモンの条件が必要とされます。
$\begin{vmatrix}
1 \; – \; a_{11} & – \; a_{12}\\
– \; a_{21} & 1 \; – \; a_{22}
\end{vmatrix} > 0 \quad \cdots \quad (1)$
理由としては、解が正値である必要があるからですが、どうしてこのような条件になるのでしょうか。
なぜこのような条件が必要なのかも含め、数式で、このホーキンス・サイモンの条件の導出方法を説明します。
導出方法
1部門と2部門の2つの部門があり、それぞれ$X_i$を生産するとします。中間需要を$x_{ij}$、最終需要を$F_i$、生産額を$X_i$とすると、
$\begin{equation}
\left\{
\begin{alignedat}{2}
x_{11} + x_{12} + F_1 = X_1 \\
x_{21} + x_{22} + F_2 = X_2
\end{alignedat}
\right.
\end{equation}$
ここで、投入係数を$a_{ij} = x_{ij} / X_j$とすると、
$\begin{equation}
\left\{
\begin{alignedat}{2}
a_{11} X_1 + a_{12} X_2 + F_1 = X_1 \\
a_{21} X_1 + a_{22} X_2 + F_2 = X_2
\end{alignedat}
\right.
\end{equation}$
となり、式変形すると、
$\begin{equation}
\begin{cases}
(1 \; – \; a_{11} X_1 \; – \; a_{12} = F_1 \\
\\
– \; a_{21} X_1 + (1 \; – \; a_{22}) X_2 = F_2
\end{cases}
\end{equation} \quad \cdots \quad (2)$
を得ることができます。これを$X_1$と$X_2$について解けば、均衡産出高モデル(レオンチェフ逆行列)を導出できます。
ただここで、$(2)$式について、式変形すると、
$\begin{equation}
\begin{cases}
X_2 = \dfrac{1 \; – \; a_{11}}{a_{12}} X_1 \; – \; \dfrac{F_1}{a_{12}}\\
\\
X_2 = \dfrac{a_{21}}{1 \; – \; a_{22}} X_1 + \dfrac{F_2}{1 \; – \; a_{22}}
\end{cases}
\end{equation} \quad \cdots \quad (3)$
となります。
この2式が交わると、解が求められることになるのですが、$X_1$と$X_2$は正の値をとる必要があります。
$(3)$式を見ると、定数項は、1番目の式がマイナス、2番目の式はプラスとなっています。
そうすると、正の値で交わるには、1番目の式の傾きのほうが、2番目の式の傾きよりも大きいことが求められます(傾きの大きさ比較が逆ならば、負の値で交わってしまいます)。
そしてこの条件は、$(3)$式から
$\dfrac{1 \; – \; a_{11}}{a_{12}} > \dfrac{a_{21}}{1 \; – \; a_{22}}$
であり、これがまさしく「ホーキンス・サイモンの条件」です。
これを式変形すると、
$(1 \; – \; a_{11})(1 \; – \; a_{22}) \; – \; a_{12} a_{22} > 0$
であり、行列式で表すと、
$\begin{vmatrix}
1 \; – \; a_{11} & – \; a_{12}\\
– \; a_{21} & 1 \; – \; a_{22}
\end{vmatrix} > 0$
となり、$(1)$式を得ることができます。
最後に
ホーキンス・サイモンの条件の導出方法を説明しましたが、重要なのは、条件についての考え方です。
なぜなら、基本的なモデルにおいては、ホーキンス・サイモンの条件を考えなくても、ソローの条件から、正の解は保証されているからです。
なので、基本的なモデルでは、ホーキンス・サイモンの条件を満たしているかどうかはどうでもいいわけですが、この条件の意味については、大事な話となっています。
参考
宮沢健一『産業連関分析入門』