はじめに
ミクロ経済学やゲーム理論などにおいて、均衡の存在を証明するのに、不動点定理が使われます。
不動点定理とは、単純化していえば、ある値があったとき、関数でその値を変換しても、元の値になるというものです。
均衡においては、どのようにしても値が変わらない状態であるので、均衡の存在証明に、不動点定理が使われるわけです。
ところで、数理経済学や経済数学を突き詰めるには、不動点定理を深堀する必要があるのですが、あくまでも経済や経済学を学ぶという前提で考えれば、あまりここに深く立ち入っても仕方ありません。
(私自身もそうでしたが)経済学を学んでいるつもりが、いつの間にか、数学ばっかり勉強しているという方もいるでしょうが、それでは本末転倒な感じもあります。
ですので、不動点定理そのものというよりは、不動点定理を使うというスタンスで、説明したいと思います。
2つの不動点定理
経済学において出てくる不動点定理としては、ブラウアーと角谷の不動点定理があります。
ブラウアーの不動点定理
ブラウアーの不動点定理とは、次のようなものです。
「$A$をユークリッド空間$R^n$のコンパクトな凸集合としたとき、任意の連続関数$f:A \rightarrow A$は、
$x = f(x)$
を満たす不動点$x$をもつ」
角谷の不動点定理
角谷の不動点定理とは、次のようなものです。
「$A$を$R^n$のコンパクトな凸部分集合とし、上半連続な凸値対応を$F:A \rightarrow A$とすると、$A$には
$x \in F(x)$
とする$F$の不動点が存在する」
均衡の存在証明のポイント
このとき、不動点定理を使うというスタンスで考えたとき、まずは、いずれの不動点定理においても重要なのは、前段部分です。
角谷の不動点定理で考えたとき、
・$A$が$R^n$のコンパクトな凸部分集合
・$F$が$F:A \rightarrow A$とする上半連続な凸値対応
を証明すれば、角谷の不動点定理から、不動点が存在することになります。
そして、この不動点が均衡を与えていることを示せば、均衡の存在証明ができることになります。
参考
西村和雄『経済数学早わかり』
奥野正寛・鈴村興太郎『ミクロ経済学Ⅱ』