はじめに
次のような、AR(1)モデルがあるとします。
$y_t = \phi y_{t-1} + u_t \quad \cdots \quad (1)$
このモデルにおいて、次のようなときに、単位根検定が行われます。
①定常性
$(1)$式において、定常性の条件を満たすには、
$|\phi| < 1$
である必要があります。しかし、$\phi$が$1$に近いことも多く、$\phi=1$のときには定常性の条件を満たさないので、$\phi$が$1$かどうかを検定する必要があります。
②モデル
ある理論モデルを検証したいときに、変数の係数が$1$であるような理論モデルについて、それが本当に正しいのかどうかを見るために、単位根検定が使われることがあります。
例えば、フィッシャー効果(フィッシャー方程式)を考えましょう。
フィッシャー効果とは、名目利子率を$i_t$、実質利子率を$r_t$、期待インフレ率を$\pi^*_{t+1}$とすると、
$i_t = r_t + \pi^*_{t+1}$
というものです。
このとき、実際の名目利子率と物価上昇率をデータを用いて、
$i_t = \beta + \gamma \pi_{t+1} + u_t$
を推定し、$\gamma$が$1$であるかどうかを調べることで、フィッシャー効果が成立しているかどうかを見ることができます。
そして、$\gamma$が$1$かどうかが問題なので、単位根検定が使われたりします。
単位根検定
$(1)$式において、単位根検定は、次のような帰無仮説を検定することになります。
$H_0 : \phi = 1$
$H_0 : \phi < 1$
しかし、このままt検定を行うと、t統計量に歪みを持つため、$(1)$式について
$y_t = (\phi \; – \; 1) y_{t-1} + y_{t-1} + u_t$
であり、$\rho = \phi \; – \; 1$として、次のように変形できます。
$\Delta y_t = \rho y_{t-1} + u_t \quad \cdots \quad (2)$
そして、これについて、
$H_0 : \rho = 0$
$H_0 : \rho < 0$
のような帰無仮説のもと、$(2)$式を推定し、$\rho$が$0$であるかを調べれば、このモデルが単位根を持っているかどうかが分かります。
そしてこの方法を「Dickey-Fuller検定」(DF検定)と言います。
参考
山本拓『経済の時系列分析』
黒住英司『計量経済学』
羽森茂之『ベーシック計量経済学』