概要
マクロ経済学の一分野として、「成長理論」というものがあります。
経済が長期的に成長できるかどうかを、どのような場合に成長できるのかなどを分析するものです。
ただ、表面的に「内生的」という言葉だけを捉えてしまうと、あくまでも表面的な理解になってしまいます。
ここには、経済学史的な一つの転換があるので、その点を含めて、説明します。
成長理論の流れ
成長理論を学ぶと、まずは「ソロー・モデル」、次に「最適成長モデル」(ラムゼーモデル)などを学ぶことになります。
(若干、最適成長モデルは、数学的な要素が強いので、省略されることもありますが…)
ソロー・モデル(最適成長モデルも同じですが)を考えると、大きな問題が生じます。
一言でいえば、
「経済がいつかは成長しないときがくる」
というものです。
ただ経済が成長し続けることもあり、それは技術進歩であるが、それは、人間がコントロールできるものではなく、
「何となく、イノベーションが起きて、技術が上がっていき、経済成長が起こる」
という点です。
これでは、確かに経済成長は続くかもしれませんが、運次第のような感じもあり、どうにもならない感じです。
そこで、登場したのが「内生的成長理論」です。
運ではなく、人間は研究開発などを行うことで、技術進歩を続けることができ、経済も成長し続けることができるというものです。
これならば、技術は重要であるという直観でも納得がいく形になりますし、歴史的にも正しい面が多いでしょう。
ハロッド・ドーマー・モデル
ところで、今では学ぶことが少なくなった感のある成長理論で、「ハロッド・ドーマー・モデル」というものがあります。
これも成長理論の1つですが、ソロー・モデルなどとは似ていますが、異なる点があります。
それは、
「均衡に達するのが、難しい」(ナイフ・エッジと言います)
ということです。むしろ、経済は不均衡・不安定に向かって、進んでいくという結論です。
これでは、人間にとって、何となく、不幸せな結果が来るしかないという感じになります。
この結果、現在ではあまり論じられることはないのかもしれません。
(なお、最適成長理論でも、このような不均衡な状態は生じますが、「完全予見」という仮定でクリアしています。そして、このハロッド・ドーマー・モデルでは、家計の最適化がないという点が大きな問題ともいえるでしょう)
均衡
なぜ、ハロッド・ドーマー・モデルの話をしたかと言えば、同じ経済成長理論でも、
ソロー・モデル ⇒ 均衡に向かう
ハロッド・ドーマー・モデル ⇒ 不均衡に向かう
といった結論が、受け入れられにくく、結果、均衡に向かうソロー・モデルが、現在でも成長理論の基礎として、残っているのでしょう。
すなわち、経済学においては、これほど、「均衡」の概念は非常に重要だということです。
内生的成長理論
このように、経済学において重視される「均衡」について、内生的成長理論では、大きな転換がありました。
ソロー・モデルなどでは、生産量が一定になることを均衡としているのに対して、内生的成長理論では成長率を均衡としている点です。
すなわち、
ソロー・モデル ⇒ 「生産量が一定」が均衡
内生的成長理論 ⇒ 「成長率が一定」が均衡
ということで、均衡の概念を変えている点です。
内生的成長理論を考えるとき、「内生的」という言葉だけに、とらわれてはいけません。
均衡というものの、概念の変更があったということは、非常に重要です。
最後に
この内生的成長理論で、ポール・ローマーはノーベル経済学賞を受賞しました。
そして、マクロ経済学の教科書には、必ず出てくる理論ともいえるでしょう。
ただ個人的には、ミクロ経済学を勉強したときのように感じで、理論的には正しく、理論的にはいいのかもしれませんが、「だから?」という印象もあったりもします。
経済学が好きなのですが、理論的な面白さと、現実の経済を比較したときに、私のような印象をもつ人も多いのではないのでしょうか。