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インパルス応答関数の概要について

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投稿計量経済学中級
時系列分析やシミュレーションで使われるインパルス応答関数の概要について、説明しています。
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概要

 インパルス応答関数とは、あるショックが与えられたとき、いくつかの変数がその相互作用の中、どのようにそれぞれの変数が変化していくかをみるものです。

 例えば、消費と所得において、一定の関係があるとしましょう。現在の消費は、過去の消費水準と所得水準で決まり、現在の所得は、過去の消費水準と所得水準に影響を受けるといった場合です。

 このようなとき、現時点、消費に何らかのショックがあり、消費水準が10%減少したとしたとき、今後の消費や所得がどうなるかをシミュレーションできるのが、インパルス応答関数です。

 このインパルス応答関数の概要について、説明しています。

インパルス応答関数

モデル

 $x_t \, , \, y_t$の2変量について、次のような2変量のVAR(2)モデルを考えます。

  $x_t = a_1 x_{t-1} +a_2 x_{t-2} + b_1 y_{t-1} + b_2 y_{t-2} + u_{xt}$

  $y_t = c_1 x_{t-1} +c_2 x_{t-2} + d_1 y_{t-1} + d_2 y_{t-2} + u_{yt}$

 なお、$u_{xt}$と$u_{yt}$は、攪乱項で、攪乱項ベクトル$\mathbf{u}_t = [u_{xt} \, \, \, u_{yt}]’$とすると、すべての$t$について、

  $E(\mathbf{u}_t) = \mathbf{0}$

  $Var(\mathbf{u}_t) = E(\mathbf{u}_t \mathbf{u}_t’) = \sigma_{ij}$

  $E(\mathbf{u}_t \mathbf{u}_t’) = \mathbf{0} \quad (t \neq s)$

と仮定します。

インパルス応答関数例

 0期において、攪乱項$u_{x0}$にのみ、インパルス(ショック)が$1$与えられたとします。
 すなわち、攪乱項は、次のように、$u_{x0}$は$1$ですが、それ以外は$0$になっている状況を考えるとします。

  $u_{x0} =1$

  $u_{y0} =0$

  $u_{xt} = u_{yt} =0 \quad (t = 1 \, , \, 2 \, \cdots)$

 $x_{-1} = x_{-2} = y_{-1} = y_{-2} = 0$とすると、このインパルスを代入することで、各期の$x_t \, , \, y_t$の値を求めることができます。

【$0$期($t=0$)】
  $x_0 = 1$

  $y_0 = 0$

【$1$期($t=1$)】
  $x_1 = a_1$

  $y_1 = c_1$

【$2$期($t=2$)】
  $x_2 = a_1^2 +a _2 + b_1 c_1$

  $y_2 = c_1 a_1 + c_2 + d_1 c_1$

 $3$期以上においても、同様に計算でき、次のような値を求めていくことができます。

  $x_0 \, , \, x_1 \, , \, x_2 \, , \, x_3 \, , \, \cdots$

  $y_0 \, , \, y_1 \, , \, y_2 \, , \, y_3 \, , \, \cdots$

 これをインパルス応答関数と言いますが、このように、攪乱項にインパルスが与えれることで、その後の変数が変わっていくことになります。

一般形

多変量VARモデル

 上記は2変量でしたが、次のような多変量VARモデルについても、インパルス応答関数を考えることができます。

  $\mathbf{z}_t = \Phi_1 \mathbf{z}_{t-1} + \Phi_2 \mathbf{z}_{t-2} + \quad \cdots \quad + \Phi_p \mathbf{z}_{t-p} + \mathbf{u}_t$

VMAモデル

 インパルスは、攪乱項に与えられるので、過去に与えられた攪乱項の影響が、各期の攪乱項にどのように波及していくかを示しているとも言えます。
 VARモデルは、代入を繰り返すことで、VMA(∞)モデルに変形できるので、上記の多変量VARモデルは、

  $\mathbf{z}_t = \mathbf{\Psi}_0 \mathbf{u}_t \; – \; \mathbf{\Psi}_1 \mathbf{u}_{t-1} \; – \; \cdots \; – \; \mathbf{\Psi}_k \mathbf{u}_{t-k} \; – \; \cdots $

というようなVMA(∞)モデルになります。
 そして、このVMA(∞)モデルに基づいて、インパルス応答関数を求めることができます。

  $\psi_{0 , ij} \, , \; – \; \psi_{1 , ij} \, , \; – \; \psi_{2 , ij} \, \, \cdots$

参考

  山本拓『経済の時系列分析

  羽森茂之『ベーシック計量経済学

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