何か経済問題が発生したときに、政府が迅速に政策を実施し、その問題に対応することが必要です。
しかし実際は、そうとはならず、ラグ(遅れ)が生じるとされます。
ラグがあれば、経済問題が起こっても、遅れて対策が打たれることになったり、対策が打たれても、実際にその経済問題を解決するには、時間がかかり、その対策は意味がないという状況が生じます。
この点で、ラグの有無やそのラグがどのぐらいかを考えたうえで、政策を検討する必要があります。
このとき、政策のラグについては、次の3つのラグがあるとされます。
・認知ラグ
・実行ラグ
・効果ラグ
なお、認知ラグと実行ラグを合わせて「内部ラグ」、効果ラグを「外部ラグ」と言ったりもします。
認知ラグ
ある経済問題やショックが発生したときに、政府がその問題などを認識するのに、時間がかかる場合があります。
経済統計や経済データが早急に入手できれば、経済問題などは把握はしやすいでしょう。例えば、為替や株価などは日々、その動向を把握でき、問題の有無を判断しやすいのですが、そうではないデータでは、データ作成自体に時間がかかり、問題の有無を判断するのに時間がかかります。
また、経済統計や経済データがすぐに入手できても、それが問題であるかどうかという点で、認知に時間がかかり、この認知ラグが発生することもあります。例えば、不動産市場の動向を考えるときに、その情報の一部はREITに反映されますが、REITの情報は重視されず、不動産の地価情報を中心に見ていると、地価情報は年に一度の統計なので、問題の有無を認知するのに、時間がかかってしまいます。
最後に当然ながら、データの有無は別として、経済の問題点などを認知する能力・スキルが政府になければ、問題の認知には時間がかかり、この認知ラグは長くなります。
実行ラグ
経済問題やショックを認知しても、それを政策として実行するには時間がかかります。
国でいえば、予備費という形で、政府がいつでも支出できる予算がありますが、財政政策を考えると、通常は、予算に関し議会の議決が必要など、その決定・実行に時間がかかります(法律変更なども同様です)。
また、議会というプロセスを別としても、政策を実行する行政機関で、人員不足などがあれば、実行には時間がかかってしまいます。
通常、行政機関は、平時における行政運営をベースに人員体制などを決めていますが、経済問題やショックが生じたときには、その人員体制では、実行ができない・遅れてしまうということがあり、この実行ラグが生じてしまいます。
効果ラグ
政策が実行されても、その効果が波及するのには時間がかかります。この状況を効果ラグと言います。
例えば、国民にお金をバラまいたとしても、そのお金を国民が実際に使うのには時間がかかります。更に、お金をバラまくことで、企業は儲かるのですが、その儲かったお金を投資や賃金上昇などに振りまくには、より一層、時間がかかります。
また、賃金上昇を政策の目的としたときには、労働市場において労働者への超過需要が生じて初めて、賃金上昇が起こります。このことから、賃金上昇を政策的には狙っても、その前に、労働者への超過需要という現象が必要など、時間を要することがあります。
まとめ
以上から、政策を実行するにあたり、その効果が発露するまでには、政策のラグがあり、次のような式で表すことができます。
政策のラグ = 認知ラグ + 実行ラグ + 効果ラグ
そして、政策の効果を考えると、これらのラグを最小化することが大事になってきます。
ただ、財政政策と金融政策を考えたとき、金融政策においては、認知ラグや実行ラグが少ないので、金融政策は政策的には迅速に対応できる政策となっています。