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特別償却について、数値例で説明します。

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投稿財政学初級
高度成長期から現在まで行われている産業政策として「特別償却」というものがあります。この特別償却について、数値例を含めて説明します。
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はじめに

 国などの政府にとって、いかに企業を育成・支援するかは、重要なテーマです。
 このとき分かりやすいのが、補助金を支出したり、減税したりというものでしょう。

 ただ、税金という仕組みを通じて、企業の資金繰りを良くするという金融支援を行う方法があります。

  「税金がかかるのに、資金繰りがよくなる?」

 もちろん、税金自体は支払う必要があるのですが、租税という仕組みを通じて、資金繰り対策を行うことができます。

 この方法として、高度成長期から現在まで行われている「特別償却」というものがあります。

 どちらかといえば経営学的に大事な感じもありますが、産業政策としては定番であり、財政学で出てきたり、経済史などでも登場するので、説明したいと思います。

特別償却

 税制度において、設備を導入したとき、会計上、一気にその投資額すべてを費用にはできず、導入後に複数年かけて、費用(減価償却費)として会計的には計上されます。

 例えば、0期目に4,000万円の設備を導入したとしましょう。
 4,000万円のお金を払っているので、0期に費用としたいと思うのですが、会計上はそれはできないことになっています。
 国の基準で、2年で費用(減価償却)としろというルールになっていたときには、1期目に2,000万円、2期目に2,000万円と分けて、費用とする必要があります。

 ここで、何年で費用にするかというのは、「法定耐用年数」として、設備ごとに決まっているわけですが、それを短くすることができるのが、「特別償却」です。

 上記の例でいえば、0期目に4,000万円すべてを費用として認めようというのが、特別償却になります(なお、取得したときに、費用とすることを「即時償却」と言います)。

 つまり定義的にまとめると、

  「特別償却とは、通常の法定耐用年数よりも早く減価償却を認める制度」

ということになります。

数値例

 ところで、早く減価償却ができれば、何がいいのかという疑問が生じると思います。
 そこで、数値例を交えて、効果を説明します。

 数値例として計算する前に、次のような場合を考えてみましょう。

前提

 ・元々10,000万円の売上がある
 ・0期に4,000万円の投資を行ない、この投資により、1期・2期に3,000万円の売上が発生する
 ・減価償却費以外に費用は発生しない
 ・耐用年数は2年で、税率は20%

通常の場合

 まずは、この前提のもと、通常の損益と資金を見てみましょう。

 表としては、大きく分けると、損益と資金の2つの表で構成されています。
 上の部分の損益はこの企業の収益を示し、資金はこの企業が資金を増減を示しています。

 例えば、1期目は、既存売上(10,000)と新規売上(3,000)の合計で13,000の売上があります。費用としては減価償却費2,000のみなので、利益は11,000となります。税率は20%なので、11,000×0.2から2,200となり、税引後利益は8,800となります。
 資金については、税引後利益8,800に(あくまでも会計上のルールなので実際に資金流出がないので)減価償却費2,000を足した10,800増加しています。

0期1期2期合計
損益
既存売上
10,00010,00010,00030,000
新規売上
03,0003,0006,000
売上計
10,00013,00013,00036,000
減価償却費
02,0002,0004,000
利益
10,00011,00011,00032,000
税金
2,0002,2002,2006,400
税引後利益
8,0008,8008,80025,600
資金
投資
▲4,00000▲4,000
増加資金
8,00010,80010,80029,600
合計
4,00010,80010,80029,600

特別償却(即時償却)の場合

 次に、特別償却の場合を見てみます。ここでは、0期にすべて費用とできる即時償却の場合を考えます。
 条件としては、減価償却のタイミングの違いがあるだけです。上記の通常の場合では1期・2期に減価償却費が発生していますが、この場合では0期に減価償却費がかかっています。

0期1期2期合計
損益
既存売上
10,00010,00010,00030,000
新規売上
03,0003,0006,000
売上計
10,00013,00013,00036,000
減価償却費
4,000004,000
利益
6,00013,00013,00032,000
税金
1,2002,6002,6006,400
税引後利益
4,80010,40010,40025,600
資金
投資
▲4,00000▲4,000
増加資金
8,80010,40010,40029,600
合計
4,80010,40010,40029,600

 表を比べると、2つのことがが分かります。

 1つは、それぞれの表の一番右の合計欄は、全く同じ数字になっているということです。売上・減価償却費などは勿論ですが、利益や税金も同じです。つまり、特別償却を行っても、支払う税金は変わらず、利益などにも影響はないということです。

 もう1つは、0期から1期の税金と資金を見てみると、特別償却では0期に税金が小さく、1期・2期で税金の額は大きくなっています。そしてこの影響で、資金は特別償却では0期が大きく、1期・2期は小さくなっています。つまり、特別償却を用いることで、税金を後払いでき、設備投資をした0期では資金繰りが楽になります。

 以上から、設備投資を行うにあたり特別償却を用いることができると、税金が後払いでき、資金繰りに余裕が出るというわけです。

まとめ

 特別償却を用いることができなければ、設備投資をしたときに、(特別償却の場合に比べて)税金を多く支払う必要があり、より一層資金を用意する必要があります。
 特に、設備投資をしたときなので、ただでさえ資金が必要なのに、税金も通常通り支払わなければいけないとなると大変です。

 そこで、そのような資金調達の負担などをなくし、より設備投資をしやすいようにしようというのが、特別償却になります。

 なお、基本は税金の後払いで、減税の効果はないということには注意してください。

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