概要
TFP(Total Factor Productive:全要素生産)とは、経済学において、技術力を測定する方法です。
「技術力を図るって、どうやって?」
「技術といってもいろいろあると思うけど」
などの疑問も生じるでしょう。
ただ最初に書いておきますと、TFPでは
「技術力を測定していない!」
ということに留意してしておかなければなりません。とはいえ、「技術力らしいもの」は測定しています。
ですので、少し経済学を勉強して、TFPだけを考えて、「技術革新があった」「技術進歩があった」というのは早計で、生兵法になります。
しっかりと、TFPの基本的な考え方を押さえておきましょう。
TFPの基本的な考え方
経済成長を考えるとき、生産面で経済を捉えると、労働と資本の投入量で総生産量が決まると考えられます。
これを増加率で表すと、次式が成り立ちます(これに係数がついたりもしますが省略)。
総生産量の増加率 = 労働投入量の増加率 + 資本投入量の増加率 + それ以外の要素の増加率
例えば、労働投入量が増えれば、その分だけ総生産量も増えるというわけです。
単純に計算から求めることができるので、この式を「成長会計」などと呼ばれたりもします。
ここで、注意が必要なのは、「それ以外の要素の増加率」というものがあることです。
生産要素としては、労働と資本しか考えていないのですが、総生産量の増加率を考えたとき、必ずこの「それ以外の要素の増加率」というものが生じてしまいます。
そこで、経済学において、これが何だろうと考えたとき、「技術進歩」だということで解釈がなされています。
それ以外の要素の増加率 ⇒ 技術進歩
こうなると、上記の式は、次のようになります。
総生産量の増加率 = 労働投入量の増加率 + 資本投入量の増加率 + 技術進歩
としたときに、総生産量・労働投入量・資本投入量は統計的にデータが得られるので、データがないのは技術進歩だけです。
そこで、次式のように式を変化させると、技術進歩(技術力)が測れるというわけです。
技術進歩 = 総生産量の増加率 - 労働投入量の増加率 - 資本投入量の増加率 +
言い換えると、生産要素の資本と労働以外で生み出された部分・余った部分を技術力と考えているわけです。
(このため、余った部分ということで、この式を考え出した経済学者の名をとり、「ソロー残差」などと呼ばれたりもします)
ポイント
上記から分かりますように、TFPでは決して、技術力を測定しているわけではありません。
「生産面を考えたとき、生産要素である労働・資本の以外で、生産に寄与している部分を技術力と考え、技術力を測定している」
というわけです。
ですので、上記で「技術力」は測定していないけど、「技術力らしいもの」を測定しているというのは、この意味です。
とはいえ、技術力という抽象的なものを直接捉えるのは難しく、ほぼ不可能です。高度な半導体技術の開発も技術進歩であり、工場の機械の並び替えで作業効率的になったというのも、生産性には寄与しており、イノベーションだとも言えます。
このように考えると、技術力やイノベーションなどを捉えるには他に手法がなく、1つの方法としては重要であり、経済学においては、定番となっています。
最後に
上記のように、TFPの基本的な考え方について説明しましたが、いかがでしたでしょうか。
なお、研究者は勿論、国では統計情報としてTFPなどの計測が行われています。
例えば、経済産業研究所では、推計したTFPが公表されているので、ご興味のある方はご覧ください。
経済産業研究所「 JIPデータベース」