経済において、どのように投資が決まるのでしょうか。
利子率が低いときは投資が増え、利子率が高いときは投資が抑制されるなどというのは、1つの例です。
ただ、他にも投資に関する考え方があり、古典的なものとして、加速度原理があります。
加速度原理とは、生産量を$Y_t$、投資を$I_t$としたとき、次のような投資関数を考えます。
$I_t = \alpha (Y_t \; – \; Y_{t-1}) \quad (\alpha > 0)$
$Y_t \; – \; Y_{t-1}$は、生産量の増加額なので、生産量の増加に応じて、投資が増えたり、減ったりするというものになっています。
理論的に導出されたものではありませんが、直観的にはよく分かる式になっています。
生産が増えれば、それに応じて投資を増やし、生産が減れば、投資を減らすという形だからです。言い換えれば。儲かれば投資を行い、儲からなければ投資を抑制するといったことです。
そして推計によっては、他の投資理論よりも当てはまりがいいことがあるとされています。
当然ながら、この理論にも問題があります。
1つは、$\alpha$が一定ということです。絶えず、生産量の増加額に対して、一定の比率で投資が行われるわけではありません。短期的にはそのようなことがあっても、長期的には成立はしないでしょう。
2つは、企業にとって、投資は長期的に視点で行うものですが、上記の式ではそのような形にはなっていません。投資額が大きければ大きいほど、企業にとっては、すぐに投資を増減させることは不可能です。しかし、上記の式では、前期と今期の生産量だけを見て、投資を決めていることになり、現実的とは言えないでしょう。
ただ、投資の中でも、在庫投資で考えれば、これらの問題点は比較的解消されると思われます。
生産量ではなく販売量と読み替えると、販売量の増減で、在庫を増やしたり、減らしたりするということになり、企業行動としては、 納得のいく定式化になっていると思います。
また、在庫投資なので、基本的には短期的な視点で行動しますし、短期的に増減をさせることも容易なので、より当てはまりがよいと考えられます。
参考
福田慎一・照山博司『マクロ経済学・入門』
中村保・北野重人・地主敏樹『マクロ経済学』