はじめに
IS-LMモデルにおいて、横軸に総生産(Y)、縦軸に利子率(i)がとられ、右下がりのIS曲線、右上がりのLM曲線が描かれます。
この図のもと、このIS曲線とLM曲線が一致するところで、所得と利子率が決定するとされます。
ところで、IS曲線は財市場、LM曲線は貨幣市場を表していますが、それぞれの市場が必ずしも均衡しているとは限りません。
それぞれの市場が不均衡なとき、その不均衡がどのようになっていくかが問題になります。言い換えれば、市場が不均衡とき、安定性を有しているかが大事になります。
そこで、IS曲線とLM曲線において、不均衡な場合にどうなるかを説明します。
IS曲線
IS曲線は財市場の均衡を表しており、式で表すと、次のようになります。
$Y = C + I + G$
$Y$:総生産、$C$:消費、$I$:投資、$G$:政府支出
左辺の$Y$は財の供給を、右辺の$C + I + G$は財の需要を示しており、この等式が必ずしも成立するわけではありません。
例えば、財市場において超過供給が生じているとき、
$Y > C + I + G$
となります。このときには、企業においては財が売れなくなるので、需要に合わせ生産を減らそうとします。
逆に、財市場において超過需要が生じているとき
$Y < C + I + G$
となります。需要のほうが大きいので、企業は生産を増やし、供給を増加させます。
以上をまとめると、IS曲線の右側では超過供給、左側では超過需要が生じていますが、この不均衡は調整されて、経済はIS曲線上に向かうとされます。
LM曲線
LM曲線は貨幣市場の均衡を表しており、式で表すと、次のようになります。
$\dfrac{M}{P} = L(i \, , \, Y)$
$M$:貨幣供給、$P$:物価、$L(i \, , \, Y)$:貨幣需要、$i$:利子率
左辺の$M/P$は貨幣の供給を、右辺の$L(i \, , \, Y)$は貨幣の需要を示しており、IS曲線の場合と同様に、この等式が必ずしも成立するわけではありません。
例えば、貨幣市場において超過供給が生じているとき、
$\dfrac{M}{P} > L(i \, , \, Y)$
となります。このときには、貨幣供給は政府のコントロールしており一定です。物価つについても短期的には一定と考えられるので、左辺は一定です。他方、右辺では、貨幣が超過供給にあるというのは債券が超過需要にあるということなので、債券価格は上昇し、利子率が低下します。そしてこの利子率低下により、貨幣の超過需要は減少していくことなります。
逆に、貨幣市場において超過需要が生じているとき
$\dfrac{M}{P} < L(i \, , \, Y)$
となります。上記と同様に、左辺は一定です。右辺においては、貨幣の超過需要は債券の超過供給を表しており、債券価格は下落し、利子率は上昇します。そしてこの利子率上昇により、貨幣の超過供給は減少していくことなります。
以上をまとめると、LM曲線の上側では超過供給、下側では超過需要が生じていますが、この不均衡は調整されて、経済はKM曲線上に向かうとされます。
IS-LM曲線
以上をまとめると、次のような図になります。
これを表にすると、次のようになります。
貨幣市場 | |||
---|---|---|---|
超過供給 | 超過需要 | ||
財市場 | 超過供給 | (A) 経済は左下に移行 | (D) 経済は左上に移行 |
超過需要 | (B) 経済は右下に移行 | (C) 経済は右上に移行 |
このような調整過程を経て、IS-LMモデルにおいては、IS曲線とLM曲線が交わる均衡点に経済は向かうとされます。
参考
中村保・北野重人・地主敏樹『マクロ経済学』