はじめに
ジョルゲンソンの投資理論においては、$t$期の投資を$I_t$、資本量を$K_tとして、次のような式が想定されています。
$I_t = \lambda (K_t^* \; – \; K_{t-1}) \quad (0 < \lambda < 1) \quad \cdots \quad (1)$
ここで、$K_t^*$は望ましい資本量であり、投資は、一定の調整速度$\lambda$のもと、この望ましい資本量と1期前の資本量との差に基づき、決定されると考えます。
この$\lambda$を推計したいのですが、$K_t^*$はどのような水準かが問題になります。
そこで、次のように推計を行っていくことになります。
推計方法
$(1)$式の他に、もう1つの条件を考えます。
最適な資本量$K_t^*$に関しては、生産量$X_t$によって決定されるとして、
$K_t^* = \alpha_0 + \alpha_1 X_t + e_t \quad \cdots \quad (2)$
という式を考えます。なお、$e_t$は、誤差項です。
そうしたとき、$(1)(2)$式から、$I_t = K_t \; – \; K_{t-1}$に注意して、$K_t^*$をキャンセルすると、
$K_t = \beta_0 + \beta_1 X_t + \beta_2 K_{t-1} + \epsilon_t \quad \cdots \quad (3)$
とすることができます。
なお、
$\beta_0 = \lambda \alpha_0$
$\beta_1 = \lambda \alpha_1$
$\beta_2 = 1 \; – \; \lambda$
$\epsilon_t = \lambda e_t$
です。
あとは、$(3)$式を回帰分析で推計し、$\lambda = 1 \; – \; \beta_2$を計算すれば、調整速度$\lambda$を得ることができます。
参考
福田慎一・照山博司『マクロ経済学・入門』
黒住英司『計量経済学』