対角化可能
$n$次の正方行列$\mathbf{A}$について、$n$次の正則行列$\mathbf{P}$が存在し、
$\mathbf{A} = \mathbf{P} \mathbf{\Lambda} \mathbf{P}^{-1}$
となるとき、$\mathbf{A}$は対角化可能であるとされます。
そしてこのとき、$\mathbf{\Lambda}$は、$\mathbf{A}$の固有値$\lambda_i$を対角成分にもつ対角行列です。
$\mathbf{\Lambda} = \begin{bmatrix}
\lambda_{1} & 0 & \cdots & 0\\
0 & \lambda_{2} & \cdots & 0\\
0 & 0 & \ddots & 0\\
0 & 0 & \cdots & \lambda_{n}\\
\end{bmatrix}$
意味合い
上記について、言い換えれば、正方行列$\mathbf{A}$は対角化が可能であれば、
$\mathbf{A} = \mathbf{P} \mathbf{\Lambda} \mathbf{P}^{-1}$
という式で表され、$\mathbf{A}$は、正則行列$\mathbf{P}$と固有値の対角行列$\mathbf{\Lambda}$で表すことができることを意味しています。
これは非常に便利であり、対角行列の性質から、$\mathbf{A}$の積は、
$\mathbf{A}^k = \mathbf{P} \mathbf{\Lambda}^k \mathbf{P}^{-1} = \mathbf{P} \begin{bmatrix}
\lambda_{1}^k & 0 & \cdots & 0\\
0 & \lambda_{2}^k & \cdots & 0\\
0 & 0 & \ddots & 0\\
0 & 0 & \cdots & \lambda_{n}^k\\
\end{bmatrix} \mathbf{P}^{-1}$
となります。
すなわち、$\mathbf{A}$の積は、固有値$\lambda_i$の累乗が大きな役割を果たしていることが分かります。
ここに経済学において重要な意味があり、ある変数について、$k$回、行列$\mathbf{A}$で掛け算をしたとき、上記の式から、固有値が1よりも大きければ、変数を拡大させ、固有値が1よりも小さければ、変数を小さくする効果があります。
経済学において、固有値が1よりも小さいということが、条件として出てきますが、発散を避けるためであり、背景にはこのような考えがあります。
参考
渡部睦夫『線形代数』
長沼伸一郎『経済数学の直観的方法 マクロ経済学編』