はじめに
経済におけるバブルについて、どのような印象をもっているでしょうか。
日本においては、1980年代後半から1990年代前半に起こったバブル経済を想起する方も多いと思います。
株式や不動産の価格が高騰し、お金持ちが増え、日本中が踊りまくり、何かにとりつかれたように、熱狂的な時代と言う印象があります。
そのため、バブルは、非合理的で熱狂的なものであり、それらか生じるものと考えられがちです。
しかし、経済学においては「合理的バブル」という考えがあります。
バブル
そもそも経済学的に、バブルを定義すれば、ある資産について、本来的な資産の価値であるファンダメンタルズと取引価格が大きく乖離し、取引価格が高騰している状態を指します。
式で表せば、
取引価格 > ファンダメンタルズ
という式の不等号が大きい場合です。
例えば、自販機で150円で売られている1本のジュースが、何らかの理由で、取引が繰り返され、10000円になったとすれば、それはそのジュースに生じているバブルと言えるでしょう。
合理的バブル
そして、合理的バブルとは、バブルは非合理的に発生するものではなく、人間が合理的に行動した結果、バブルが生じると考えるものです。
例えば、ある投資家がいて、ある資産の価格が高騰している中で、この現象はバブルだと分かっているとします。しかし、この資産を購入しても、売り抜けることができ儲かると思えば、更に売買が繰り返されて、価格の上昇が続くことになります。
投資家は何かの要因で浮かれてその資産を購入するのではなく、合理的に判断し、資産を購入し売却しようとしているため、このような投資家のもと生じているバブルなので、合理的バブルと言います。
利子と値上がり
違う例で説明しましょう。
ある投資家が、銀行に預金するか、株式に投資するかを選択するとします。ただ株式に投資しても配当はつかず、収益としては値上がり率だけが期待できるとします。
このとき、
銀行預金の金利:1%
株式の値上がり率:10%
ならば、明らかに、株式の値上がり率のほうが高く、合理的に考えれば、株式に投資したほうがいいということになります。
値上がり率は10%でどんどんとこの株式の株価は上昇していきますが、株式の値上がり率10%を期待出来れば、この株式に投資するほうが合理的となります(逆に言えば、このような状況で、銀行預金を選ぶのは非合理)。
もちろん、株式は必ず値上がりするものではなく、値下がりの可能性もあります。
例えば、60%の確率で10%値上がりし、40%の確率で10%値下がりするとします。このとき、株式の期待値上がり率は、
60% × 10% + 40% × (-10%) = 2%
となり、それでも銀行預金の金利の1%よりも、株式投資の収益は高くなり、株式投資をしたほうが合理的となります。
合理的バブルの発生条件
経済学における実証では、
実質利子率 < 経済成長率
のときに、合理的バブルが発生しやすいとされています。経済成長率を所与として言い換えれば、実質利子率が非常に小さいときに、合理的バブルが発生しやすいと言えます。
経済成長率は、資産価格の上昇率にプラスの影響があることを考えれば、上記の例(利子と値上がり)から、直観的にも理解しやすい結果となっています。
これを日本経済に当てはめれば、バブル経済の頃は、金利も低く、経済成長も期待できたので、バブルが発生しましたが、バブル崩壊後は金利も低かったのですが、同時に経済成長も期待できなかったので、上記の実質利子率と経済成長率の関係式が成立せず、バブルは起こらなかったと言えるでしょうか。