概要
経済成長モデルのソロー・モデルにおいて、経済は一定の水準(「定常状態」)に落ち着く(収束する)とされています。
(なお、ソロー・モデルについては「ソロー・モデルを解説(数式あり)」を見てください)
ここで、いろいろな国がある中で、いつかはどの国も同じ水準に収束するのか、そうではないのかが問題になります。
例えば、途上国が経済成長して、ある経済水準に収束したとしましょう。その状態が先進国と同じならばいいのですが、そうではなく先進国よりも低水準で経済が収束したら、永遠に途上国は先進国には追い付けないという結果になるからです。
そこで、この収束について、より厳密に考えたとき、2つの考え方があります。
「絶対収束」(無条件収束)と「条件付き収束」というものですが、それぞれについて、説明したいと思います。
2つの収束
絶対収束(無条件収束)
絶対収束とは、経済水準がどの国も同じ水準になるというものです。どこでも当てはまるので「絶対」という言葉になっています。
この絶対収束が実際の経済で実現されていれば、途上国もいつかは先進国のような経済水準になることを意味します。
条件付き収束
条件付き収束とは、ある経済水準には収束しますが、その状態は国によって違うというものです。
この場合には、経済が収束したとしても、途上国は必ずしも先進国と同じような経済水準になるとは限りません。
途上国にとっては、ある種の悲劇的な結論かもしれませんが、ソロー・モデル自体からも、このような状態は想定されています。ソロー・モデルにおいては、貯蓄率・人口成長率などの外生変数が組み込まれています。言い換えれば、貯蓄率・人口成長率などによって、ソロー・モデルでは成長率や定常状態が異なる形になっています。
このことから、ソロー・モデルでは、例えば、貯蓄率が低い国と高い国で比較した場合、貯蓄率が高い国のほうが、高い経済水準に落ち着くことが示唆されています。
実証研究
このような2つの収束があるとき、実際の経済ではどちらが成立しているのかが疑問として湧いてきます。
いろいろな実証研究がありますが、
「絶対収束は成立していないが、条件付き収束は成立している」
というのが、実際のデータを分析したときの結論となっています。
言い換えると、
「経済成長率は経済が成長するほど低くなり、最終的には一定の経済水準に向かっている」
「しかし、その一定の経済水準は国によって異なる」
ということです。
勿論、成長理論は、ソロー・モデルだけではなく、内生的成長モデルなど、他のモデルがあったりもしますが、1つの結果として、重要なものと言えるでしょう。