はじめに
海外との取引を行うにあたり、同じ物ならば、通貨の単位が異なるだけで、同じ価値を有すると考えられるので、それが為替レートになると考えられます。
例えば、ビッグ・マックはどこの国でも同じ物なので、アメリカで$3、日本で300円で売られているとすれば、
$3=300円
であり、為替レートは、
$1=100円
であると考えられるでしょう。
このような考えをもとに決定される為替レートを「購買力平価」と言います。
なお、各国の購買力平価は、OECDで公表されています。
OECD「Purchasing power parities (PPP)」
ただ、この購買力平価には、絶対的購買力平価と相対的購買力平価という2つの種類があります。
絶対的購買力平価
絶対的購買力平価は、上記の考えを一般物価に当てはめたもので、外国の物価に為替相場を掛ければ、自国の物価になるので、
自国の物価 = 名目為替相場 × 外国の物価
であり、これを変形すると、
名目為替相場 = 自国の物価 ÷ 外国の物価
となり、これを「絶対的購買力平価」と言います。
例えば、自国の物価が上昇すれば、名目為替相場の値も大きくなり、減価(日本ならば円安)することになります。逆に、外国の物価が上昇すれば、名目為替相場の値は小さくなり、増価(日本ならば円高)することになります。
相対的購買力平価
絶対的購買力平価は、物価水準によって、為替相場が決定されると考えていますが、同じ物価をベースしつつ、その変化率で為替相場が決定されると考えるのが、相対的購買力平価です。
「相対的購買力平価」は、次式のように、変化率で考えたものになります。
名目為替相場の変化率 = 自国のインフレ率 - 外国のインフレ率
絶対的購買力平価と同じように、自国のインフレ率が高くなれば、名目為替相場の変化率も上昇し、減価(日本なら円安)になると考えられます。
留意点
相対的購買力平価よりも、絶対的購買力平価のほうが直観的には分かりやすい面がありますが、その計算や実証には相対的購買力平価のほうが優れている面があります。
絶対的購買力平価が均衡していなくても、相対的購買力平価は成立する可能性がある点です。
例えば、絶対的購買力平価で不均衡が生じており、等式が成立していないとしましょう。
名目為替相場 ≠ 自国の物価 ÷ 外国の物価
不等式ですが、一定率を掛ければ、とりあえずは等式にすることができます。
名目為替相場 = α × 自国の物価 ÷ 外国の物価
これを相対的購買力平価に直すと、
名目為替相場の変化率 = αの変化率 + 自国のインフレ率 - 外国のインフレ率
となりますが、αは単なる係数なので、αの変化率はゼロであることから、
名目為替相場の変化率 = 自国のインフレ率 - 外国のインフレ率
となり、相対的購買力平価が成立していることになります。
このことから、絶対的購買力平価が成立しなくても、相対的購買力平価が成立している可能性があることになります。
参考
佐々木百合『国際金融論入門』