はじめに
現在、アメリカがインフレを抑えるため、利上げを実施し、円安が進んでいます。
ただ、なぜそうなるのかを考えると、
「アメリカのほうが金利が高いのだから、アメリカにお金を置いたほうが儲かる」
といったぐらいの認識ではないでしょうか。
ある意味、正しいのですが、この点で、しっかりとロジックを抑えていきたいと思います。
金利平価
まず、ある資産を$ A$を運用することを考え、自国の金利をそれぞれ$ r$とすると、来年には資産は、次のようになります。
$ (1+r)A$
他方、この資産$ A$を、外国で運用することを考えましょう。このとき、為替レートを$ e$とします。為替レートは、外国を基準したもので、例えば、日本・アメリカで考えれば、$ e$円/1ドルとなっているとします。
このとき、外国では、外国の通貨でしか運用はできないので、資産は$ A/e$となります。
そして、外国の金利を$ r^f$とし、外国で資産を運用したときには、来年には資産は、次のようになります。
$ (1+r^f) A \dfrac{e^*}{e}$
ここで注意は、来年の為替レート$ e^*$が入っている点です。
上記の2つを考えたとき、自国で運用しようが、外国で運用しようが、(裁定が成立していれば)その収益は変わらないはずです。
そうすると、上記の2式は等しくなり、
$ (1+r)A = \dfrac{(1+r^*) A}{e}$
となり、式変形すると、
$ e = \dfrac{1+r^*}{1+r} \times e^*$
となります。
この式を見たらわかるように、$ e^*$はおいておいて、為替レート$ e$は、
外国の金利$ r^*$が大きいほど ⇒ 増価(ドル高、円安)
自国の金利$ r$が大きいほど ⇒ 減価(ドル安、円高)
になることが分かります。
これが正しく、アメリカの金利が上がると、円安が進むというロジックです。
更には、上記の式の来期の為替レート$ e^*$に着目すると、
来期の為替レートが大きいほど(ドル高、円安) ⇒ 増価(ドル高、円安)
来期の為替レートが小さいほど(ドル高、円安) ⇒ 減価(ドル安、円高)
となります。
すなわち、将来の為替レートが、ドル高・円安になると予想すれば、現在の為替レートもそうなるということです。
ポイント
上記から分かることは、次のようなです。
・アメリカの金利が上昇することで、ドル高・円安を招いている
・さらに、将来のドル高・円安を予想するため、より一層のドル高・円安を招くことになっている
ということです。
最後に
上記のような考えは、「金利裁定」と言います。
ただ、当然ながら、
「外国とのやりとりは、資産運用だけではなく、貿易なども行っている」
「そもそも金利は、金利そのものではなく、貨幣量などでコントロールしており、違う影響もある」
などの意見があるでしょう。
この点で、為替レート決定の要因について、他の考え方もありますので、注意が必要です。