スポンサーリンク

ストルパー=サミュエルソンの定理の証明(数式)

スポンサーリンク
 
投稿国際経済学中級
国際経済学のヘクシャー=オリーン・モデルにおけるストルパー=サミュエルソンの定理について、数式で証明します。
スポンサーリンク
スポンサーリンク
スポンサーリンク

ストルパー=サミュエルソンの定理

 ヘクシャー=オリーン・モデルにおいて、ストルパー=サミュエルソンの定理とは、次のようなものです。

 「資本集約財の価格が上昇すると、資本レンタルが上昇し、労働の賃金は減少する。
  逆に、労働集約財の価格が上昇すると、労働の賃金が上昇し、資本レンタルは減少する。」

 ところで、どうしてこうなるについて、国際経済学では、図で説明がなされることがありますが、ここでは数式で説明します。

証明

前提

 ある国において、財1と財2を労働と資本を用いて、生産しているとします。

 財の生産量を$Y_i (i=1 \, , \, 2)$として、財$i$の生産関数を$F_i$、財$i$を生産するのに必要な労働・資本を$L_i \, , \, K_i$とします。

  $Y_i = F_i(K_i \, , \, L_i) \quad (i=1 \, , \, 2) \quad \cdots \quad (1)$

 そして、賃金$w$と資本レンタル$w$はどちらの生産においても等しいので、それぞれの財を生産するにあたっての利潤$\pi_i$は、

  $\pi_1 = Y_1 \; – \; r K_1 \; – \; w L_1$

  $\pi_2 = p Y_2 \; – \; r K_2 \; – \; w L_2$

 なお、財1の価格をニュメレールとして1としており、財2のところに価格$p$がついている形になっています。

利潤最大化

 それぞれの財について、利潤最大化を行うとして、$K_i \, , \, L_i$で微分し、ゼロとすると、

  $\displaystyle r = \frac{\partial Y_1}{\partial K_1} = p \cdot \frac{\partial Y_2}{\partial K_2} \quad \cdots \quad (2)$

  $\displaystyle w = \frac{\partial Y_1}{\partial L_1} = p \cdot \frac{\partial Y_2}{\partial L_2} \quad \cdots \quad (3)$

となります。

生産関数の書き換え

 今後の議論にあたって、式がややこしくなるのを避けるため、表記を改めておきたいと思います。
 生産要素について、1人当たりの資本$k_i$を

  $k_i = \dfrac{K_i}{Li} \quad (i=1 \, , \, 2)$

とすると、ヘクシャー=オリーン・モデルでは生産関数は1同次なので、$(1)$式について、$f_i$を用いて、次のように書き換えます。

  $Y_i = F_i(K_i \, , \, L_i) = L_i F_i(K_i / L_i \, , \, 1) = L_i f_i(k_i)$

 この式から、

  $\displaystyle \frac{\partial Y_i}{\partial K_i} = f’_i(k_i) \quad \cdots \quad (4)$

  $\displaystyle \frac{\partial Y_i}{\partial L_i} = f_i(k_i) \; – \; k_i f’_i(k_i) \quad \cdots \quad (5)$

となります。

 これに合わせて、$(2)(3)$式も書き換えておくと、次のようになります。

  $\displaystyle r = f’_1(k_1) = p f’_2(k_2) \quad \cdots \quad (6)$

  $\displaystyle w = f_1(k_1) \; – \; k_1 f’_1(k_1)= p (f_2(k_2) \; – \; k_2 f’_2(k_2)) \quad \cdots \quad (7)$

生産要素価格比

 生産要素の価格について、

  $\omega = \dfrac{w}{r}$

という生産要素価格比を定義します。

 生産要素の費用最小化を考えると、生産要素価格と限界代替率は一致値するので、

  $\omega = \dfrac{w}{r} = \dfrac{\partial Y_i / \partial L_i}{\partial Y_i / \partial K_i}$

であり、$(4)(5)$式を用いると、

  $\omega = \dfrac{w}{r} = \dfrac{f_i(k_i)}{f’_i(k_i)} \; – \; k_i \quad \cdots \quad (8)$

となります。

価格比

 価格比がどうなるかを見たいと思いますが、財1はニュメレールなので、$p$を計算すればいいことになります。
 $(6)(7)$式を用いて、$p$について、解いていきます(どちらの式でもいいのですが、$(7)$式を用いて解いてみます)。

  $p = \dfrac{w}{f_2(k_2) \; – \; k_2 f’_2(k_2)}$

 ここで、$(8)$式と$(6)$式を用いて、$w$を計算すると、

  $\displaystyle w = r \left( \dfrac{f_2(k_2)}{f’_2(k_2)} \; – \; k_i \right) = f’_1(k_1) \left( \dfrac{f_2(k_2)}{f’_2(k_2)} \; – \; k_2 \right) = \frac{f’_1(k_1)(f_2(k_2) \; – \; k_2 f’_2(k_2))}{f’_2(k_2)}$

となります。

 なので、価格$p$は、

  $p = \dfrac{f’_1(k_1)}{f’_2(k_2)} \quad \cdots \quad (9)$

となります。

価格比と要素価格比の関係

 ここで、$(8)$式において、

  $f’_i(k_i) = \dfrac{f_i}{\omega + k_i}$

と変形できるので、$(9)$式は、

  $p = \dfrac{f_1(k_1) / (\omega + k_1)}{f_2(k_2) / (\omega + k_2)} = \dfrac{f_1(k_1) \omega + f_1(k_1) k_2 }{f_2(k_2) \omega + f_2(k_2) k_1}$

となります。

 価格比と要素価格比の関係をみるため、この式を微分すると、

  $\dfrac{\partial p}{\partial \omega} = \dfrac{(k_1 \; – \; k_2)f_1(k_1)f_2(k_2)}{(f_2(k_2)\omega +k_1 f_2(k_2)^2}$

となります。

 この式から、

  $k_1 > k_2$のとき、$\dfrac{\partial p}{\partial \omega} > 0 \quad \cdots \quad (10)$

  $k_1 < k_2$のとき、$\dfrac{\partial p}{\partial \omega} < 0 \quad \cdots \quad (11)$

となります。

ストルパー=サミュエルソンの定理

 財1が資本集約的、財2が労働集約的な財とすると、

  $k_1 > k_2$

となります。

 ここで、財2の価格が上昇したとします。このとき、価格比$p$が上昇するので、$(10)$式から、$\omega$は上昇しますが、$\omega = w/ r$なので、相対的に賃金は上昇し、資本レンタル率は低下することになります。

 逆に、財1の価格が上昇したとすると、価格比$p$は低下するので、$(10)$式から、$\omega$は低下し、相対的に賃金は低下し、資本レンタル率は上昇することになります。

参考

  小田正雄『現代国際経済学

  井手豊也『ビギナーのための国際経済学

スポンサーリンク
タイトルとURLをコピーしました