はじめに
次のような基本的な差分方程式があるとします(ただし、$a \, , \, b$は定数)。
$x_{t+1} = a x_t +b \quad \cdots \quad (1)$
経済学でも時折出てくる差分方程式ですが、この差分方程式の解法や均衡などについて、説明します。
解
$(1)$式についての解の公式は、次のようになります。
$x_t =x_0 \, a^t + b \dfrac{1 \; – \; a^t}{1 \; – \; a} \quad (a \neq 1$のとき$) \quad \cdots \quad (2)$
$x_t = x_0 + bt \quad (a=1$のとき$) \quad \cdots \quad (3)$
求め方
$(1)$式において、$t$に次のように値を代入すると、
$x_1 =a \, x_0 + b$
$x_2 =a \, x_1 + b = a^2 \, x_0 + b (1+a)$
$x_3 =a \, x_2 + b = a^3 \, x_0 + b (1+a+a^2)$
$x_4 =a \, x_3 + b = a^4 \, x_0 + b (1+a+a^2+a^3)$
$\vdots$
$x_t = a \, x_{t-1} + b = a^t \, x_0 + b (1+a+ \; \cdots \; + a^{t-1})$
となるので、
$x_t = a^t \, x_0 + b (1+a+ \; \cdots \; + a^{t-1})$
を解けばいいことになります。
$a\neq 1$のときには、等比級数の和の公式から、次のようになります(公式については、「級数に関する公式あれこれ」)。
$x_t =x_0 \, a^t + b \dfrac{1 \; – \; a^t}{1 \; – \; a}$
$a= 1$のときには、これを代入すると、次を得ることができます。
$x_t = x_0 + bt$
以上から、上記の解を得ることができます。
均衡
均衡においては、
$x_{t+1} = x_t$
となるので、$(1)$式について、これを代入すると、
$x_{t+1} = a x_t +b$
であり、このときの解を$x^*$とすると、
$x^* = \dfrac{b}{1 \; – \; a}$
であり、均衡解を得ることができます。
安定性
最後に、$t$が大きくなるにつれ、均衡に向かうかどうか、安定性を見ていきましょう。
まずは、$(2)$式について、次のように変形します。
$x_t = \left( x_0 \; – \; \dfrac{b}{1 \; -\; a} \right) a^t + \dfrac{b}{1 \; -\; a} \quad \cdots \quad (4)$
このとき、右辺第2項の$b/(1-a)$は均衡の値であり定数なので、右辺第1項だけを考えればいいことになります。そして、$a_t$がどうなるかで、安定か不安定であるかを判断できることになります。
なお、経済学においては、$r \geq 0$であることが多いので、この場合で考えます。
($a=0$のとき)
これを$(4)$式に代入すると、均衡解になります。
($0 < a < 1$のとき)
このときには、
$\displaystyle \lim_{t \rightarrow \infty} a^t = 0$
なので、$(4)$式は、均衡に収束することが分かります。
($a=1$のとき)
$(3)$式より、
$\displaystyle \lim_{t \rightarrow \infty} x_0 + bt = \infty$
から、発散することが分かります。
($1 < a$のとき)
このときには、
$\displaystyle \lim_{t \rightarrow \infty} a^t = \infty$
なので、$(4)$式は、発散することが分かります。
まとめ
以上から、
$0 \leq a <1$のとき、安定
$a > 1$のとき、不安定
となります。
ちなみに、上で説明を省略しましたが、結論だけ言うと、$a<-1$のときには不安定、$a=-1$のときはサイクル、$-1 < a <0$のときは安定となります。