概要
産業組織論においては、市場の構造がどうであるか、競争的であるかが重要になります。
特に、ある産業において、寡占・複占状態にあるか、企業がどれだけ集中しているかなどが気になるところです。
このとき、個々の企業は別として、産業自体の集中度を測る指標が必要となります。
指標としては、様々なものがありますが、産業組織論としては、古典的なものとして、ハーフィンダール指数があります。
ハーフィンダール指数
ある産業を考えた場合、売上などの市場規模に対して、$ n$数の企業が存在する中、$ i$企業のシェアを$ S_i$をすると、次のような式が成立します。
$ \displaystyle \sum^{n}_{i} S_i = 1$
ただしこれでは、各企業のシェアが分かるだけで、集中度は分かりません。
そこで、経済学者ハーフィンダール(Herfindahl)が考えたのが、ハーフィンダール指数です。
$ \displaystyle \sum^{n}_{i} S^2_i$
ポイントは、シェアに対して2乗することで、ウェイトづけをしている点です。
なお、指標の定義から、指数としては、0~1の値をとることになります(企業数は無限大にならないため、0にはなりませんが、極値としてこのようになります)。
数値例
①企業数は2社で、1社はシェア90%、もう1社は10%の場合
$ 0.9^2 + 0.1^2 = 0.82$
②企業数は2社で、1社はシェア60%、もう1社は40%の場合
$ 0.6^2 + 0.4^2 = 0.52$
③企業5社で、1社はシェア60%、残り4社は10%の場合
$ 0.6^2 + 0.1^2 + 0.1^2 + 0.1^2 + 0.1^2 = 0.4$
これらの例から分かるように、①と②の数値例で企業数が同じであっても、そのうちの1社のシェアが高ければ、この指数は大きくなり、②と③の数値例のように、トップ企業のシェアが変わらなくても、それ以外の企業数が多くなれば、数値は低くなります。
統計例
現在は調査は行われていませんが、かつては公正取引委員会で、「生産・出荷集中度調査」ということで、ハーフィンダール・ハーシュマン指数(ハーフィンダール指数)が公表されていました(平成26年まで)。
公正取引委員会「生産・出荷集中度調査」
公正取引委員会は、独占禁止法を所管しており、ある産業が独占状態にあるかどうか、規制を適用するかどうかをおこなっているところなので、このような統計がありました。
なぜ、調査が中止になったかは知りませんが、このハーフィンダール指数について知るために、参考になる部分はあるのではと思います。