期待効用仮説
期待効用仮説とは、ある選択をしたときに、確率を考慮して得られる効用のことです。
ある選択$ P$をしたとしましょう。
このとき、$ p_i$の確率で$x_i$が発生し、その効用を$ u(x_i)$としたとき、(選好順序が完備性・推移性・独立性・連続性を満たせば)次式が成立します。
$ \displaystyle U(P) = \sum^n_{i=1} p_i u(x_i) \qquad ( p_i \geq 0 , \quad \sum^n_{i=1} p_i =1)$
この効用関数は、期待効用関数と呼ばれます(ノイマン=モルゲンシュテルン効用関数とも言われます)。
【数値例】
ある選択について、2パターンの結果があるとします。効用が$ u(x_i)=x_i^3$としたとき、
$ U(P) = p x_1^3 + (1-p) x_2^3$
となります。このとき、20%の確率で3、80%の確率で1の利益が得られるとすると、期待効用は次のようになります。
$ U(P) = 0.2 \times ( 3 )^3 + 0.8 \times ( 1 )^3 = 6.2 $
リスクに対する態度
期待効用関数を用いると、リスクに対する態度を、次のように表すことができます。
リスク愛好的 … $ \displaystyle \sum^n_{i=1} p_i u(x_i) \gt \sum^n_{i=1} u(p_i x_i)$
リスク中立的 … $ \displaystyle \sum^n_{i=1} p_i u(x_i) = \sum^n_{i=1} u(p_i x_i)$
リスク回避的 … $ \displaystyle \sum^n_{i=1} p_i u(x_i) \lt \sum^n_{i=1} u(p_i x_i)$
(例)
確率25%で20、確率75%で100得られるような状況を考えます。
期待利得は、次のようになります。
$ 0.25 \times 20 + 0.75 \times 100 = 80$
【リスク愛好的な場合】
ある個人の期待効用関数として、$ u(x)=x^2$とします。
$ p_1 u(x_1) + p_2 u(x_2)= 0.25 \times 20^2 + 0.75 \times 100^2 = 6,400$
$ u(p_1 x_1) + u(p_2 x_2)= (0.25 \times 20)^2 + (0.75 \times 100)^2 = 7,600$
つまり、$ p_1 u(x_1) + p_2 u(x_2) \lt u(p_1 x_1) + u(p_2 x_2)$が成立しており、この個人はリスク愛好的であることが分かります。
【リスク中立的な場合】
ある個人の期待効用関数として、$ u(x)=x$とします。
$ p_1 u(x_1) + p_2 u(x_2)= 0.25 \times 20 + 0.75 \times 100 = 80$
$ u(p_1 x_1) + u(p_2 x_2)= (0.25 \times 20) + (0.75 \times 100) = 80$
つまり、$ p_1 u(x_1) + p_2 u(x_2) = u(p_1 x_1) + u(p_2 x_2)$が成立しており、この個人はリスク中立的であることが分かります。
【リスク回避的な場合】
ある個人の期待効用関数として、$ u(x)=\sqrt{x}$とします。
$ p_1 u(x_1) + p_2 u(x_2)= 0.25 \times \sqrt{20} + 0.75 \times \sqrt{100} = 8.6$
$ u(p_1 x_1) + u(p_2 x_2)= \sqrt{0.25 \times 20 + 0.75 \times 100} = 8.9$
つまり、$ p_1 u(x_1) + p_2 u(x_2) \lt u(p_1 x_1) + u(p_2 x_2)$が成立しており、この個人はリスク回避的であることが分かります。
参考
岡田章『ゲーム理論・入門』