はじめに
時系列データにおいて、時間トレンドが存在することがあります。
ただ時間トレンドがあると、例えば、循環変動などが分かりづらくなったりして、分析が容易ではなくなります。
そこで、トレンドを除去することで、分析を容易にしたいとき、階差をとることでこれが可能になります。
階差によるトレンドの除去
例えば、次のようなトレンドがデータがあったとします。
$y_t = a + bt + c t^2$
式に$t$があり、トレンドを有しているわけですが、階差をとることでトレンド($t$)を除去できます。
$\Delta y_t = y_t \; – \; y_{t-1}$
とすると、3次までの階差をとったものは次の通りです。
$\Delta y_t = y_t \; – \; y_{t-1} = (a + bt + c t^2) \; – \; [a + b(t \; – \; 1) + c (t \; – \; 1)^2] = b \; – \; c + 2ct$
$\Delta^2 y_t =\Delta y_t \; – \; \Delta y_{t-1} = 2c$
$\Delta^3 y_t =\Delta^2 y_t \; – \; \Delta^2 y_{t-1} = 0$
このように、階差をとることで、式からはトレンドの$t$がなくなることが分かります。
また、次のように攪乱項があるときには、
$y_t = a + bt + c t^2 + e_t$
階差をとると、
$\Delta^3 y_t =\Delta^3 (a + bt + c t^2) + \Delta^3 u_t = \Delta^3 u_t$
であり、この場合にも、トレンドはなくなります。
一般的には、トレンドが$k$次の多項式であれば、$k+1$次の階差をとることで、トレンドを除去することができます。
留意点
ただ、階差をとった場合、攪乱項があったとき、トレンドはなくなりますが、
$\Delta^3 u_t =u_t + u_{t-1} \; – \; u_{t-2} + u_{t-3}$
のように攪乱項が階差に入り込むことがあります。このときには、系列相関が生じることになります。
参考
中村隆英・美添泰人・新家健精・豊田敬『経済統計入門』